ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

須田セツ子著『私がしたことは殺人ですか?』

映画「終の信託」が材を取った 川崎協同病院事件。
重症喘息患者の死をめぐり
安楽死とは 尊厳死とは」の議論、「美人医ウンヌン」の興味本位な報道、で覚えておられる方も少なからず、と思います。
著者は
殺人罪の有罪判決を受けた(懲役1年6月 執行猶予3年 最高裁で2009年確定)
担当医です。

本書タイトルの問いかけは
自分の医療行為は刑法199条「人を殺した」に当たる筈がなく
仮に刑法の構成要件に該当せざるを得ないとしても 自分は殺していない
を含意します。
後者は
裁判上の「真実」イコール真実か、という数多論じられてきたテーマとも言えましょう。

その上で著者は 終末期医療についての持論を展開。死は厳かなものであるのだから ガイドラインや法律でガチガチにスキームを固めるよりもむしろ 寄り添っている家族と担当医と本人の「阿吽の呼吸」の方が相応しいのでは、と。
(チームで合議するとどうしても「延命」の結論になってしまうので)担当医一人だけの判断であるべき、との考えには小さからぬ疑問がありますが。

私は成人してから軽度とは言え喘息で苦しんだ時期があり
同年代のみなさま同様に身内を看取ったり、あるいは例の「同意書」に何度か署名した経験もあり
いろいろなことを考えさせられた一冊です。
青志社、2010年発行。

 

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恩田陸『ユージニア』

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昭和40年代、日本三大庭園の一つがある地方都市で、帝銀事件に似ているが 帝銀事件より死亡者が多い毒殺事件が起こった。10年後20年後に11人が語る真相(あるいは「真相」)とは? 現場に残されたメモの、ユージニアなる言葉の意味は?
2006年日本推理作家協会賞の長編部門と連作短編集部門 ダブル受賞作。

「関係者が語る「真実」は食い違いもありながら真実に収斂していく」は定番的構成と言えるかもしれませんが、11人各々が語る章ごとに 各人の人生(≠ステレオタイプ)も浮き彫りになる完成度の高さ。(ナルホド長編賞にして連作短編賞!)
エラリー・クイーン『Yの悲劇』にちょっぴりだけ似ていますが オマージュと捉えこそすれケチをつけるようなタグイではありますまい。

ストーリーの巧みさばかりでなく、文章もイイ(その両面が 小説たる車の両輪と考えます)。
たとえば、単行本239ページ&文庫219ページ↓
重たげに夏は過ぎる。
枝豆の莢やとうもろこしの芯、西瓜の白い部分やアイスキャンデーの棒の数を増やし、出入りの酒屋がビールの空き瓶をがしゃんと鳴らす音を聞きながら、夏はのろのろと過ぎてゆく。
↑ホントに素敵な文章と思います。まさに「(昭和40年代の)夏」が描かれていて。その時代 こどもだった私は夏休み(の後半)の空気感がホントにこんなだったなあと。

文庫の巻末には通常の「解説」や「著者あとがき」ではなく、「ユージニアノート」と題して本書の造りに携わったブックデザイナーたちが語っています。表紙の写真は作品のイメージ、タイトルと著者名は同じサイズなのに著者名の方が大きく見える、単行本本文の「平衡感覚がちょっと麻痺する」書体等々 本作にふさわしく「頭がくらっとする」仕掛けを随所に施した、と。

ナゼ今まで恩田陸を読まなかったのか 自分!と言いたくなるほどの面白さでした。

西村京太郎『十五歳の戦争 陸軍幼年学校「最後の生徒」』

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著者の十津川警部シリーズを通勤電車の伴としていたのは私ばかりではないであろう。
そんな1930年生れの著者が、戦時中および敗戦後の心の揺れを振り返り、戦後72年後の今にしてどう思うかを綴った一冊。

私の父が著者と同い年。終戦の年に「志願」して、著者は陸軍幼年学校に、父は海軍に入った。戦争がもう少し続いていたら、、、私たちが十津川警部を読むことはなかったかもしれないし 読む私がいなかったかもしれない。

通勤電車の友をモノした著者だけに、文章はとても読みやすい。 

 

ティーンエイジャーも おおぜい戦死↓

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小林信彦『おかしな男 渥美清』

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渥美清と言えば映画「男はつらいよ」の寅さん(本書表紙)ですが

もちろん、リアル渥美清は =人情味あふれるトボけた人気者「寅さん」ではありません。 ≒ですらなく、まるっきり≠であった、ことが分かる評伝です。親交のあった著者が、等身大の実像を描き出しました。

可笑しな寅さんを演じた、「おかしな男」田所康雄(渥美清の本名)。この「おかしな」には 複雑な人間という意味合いが。一筋縄ではない「複雑さ」なれど、初期寅さんのメインであった「ハチャメチャ」も晩期寅さんにメインであった「人生の先達者」も 田所康雄とは真逆でした。
2000年 新潮社から刊行→新潮文庫化→ちくまから再文庫化。

さて 寅さんメイ言 数多あれど、私的イチバンは

「だからオレとオマエは違う人間だ。早い話オレがイモ食ってオマエのケツから屁が出るかよ」。

たしかに!そう考えれば・・・オノレと違う考えや振る舞いを受け入れられない、が非寛容の根っこだろうから。

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靴磨き契約⁇

いわゆる「靴磨きのおじさん」、いつのころからか町なかで見かけなくなったなあ。

 昭和のころ、「おじさん」と「契約」していたユカイな先輩営業マンがいました。

ビル2階の自席机の下に一足置いておき、日中「おじさん」がオモテから入って来て路上の「仕事場」に持ち帰り、磨いたら机の下に戻しておく、、、というサイクルで料金は毎月前払い。

 「おじさん」は見なくなるわセキュリティのあれこれでカンタンに出入りできなくなるわで今やこんな「契約」は、、、

 

↑「三丁目の夕日」的郷愁に浸っているような印象を持たれた向きもあるかもしれませんが

実のところ私はそういうクチではないです。

ゼッタイ戻りたくはありまっしぇん。温水洗浄便座がない時代には。

映画「ドリーム」ジーンときたセリフそして寅さん

「黒人も白人も小便の色は同じだ」
所属部署で唯一の黒人である主人公。トイレは800メートルも離れた「非白人用」まで毎度毎度行かなければならなかった。それを彼女から訴えられた本部長が、「実力行使」によって「解決」したときの言。(本部長以下誰も 言われるまでそのことに全然気付かなかった、というより気にも止めなかったこともキチンと描かれている。)

シモ方面つながりで思い出したのが、寅さんメイ言の中で私がイチバン好きな
「俺とお前は違う人間だ。早い話、俺がイモ食ってお前の尻から屁が出るか」

「同じ」と「違う」なので一見逆の話のようで、人間観みたいなものが共通していると思う。(最高中の最高の頭脳集団本部長と寅さんがあらゆる意味で真逆なのはともかく^^;)

なお、寅さんで二番目に好きなのは「テメエ さしずめインテリだな」です。 

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映画「ドリーム」

オススメと特オススメがあるとすれば ダンゼン後者、いや 超!特!オススメ!!です。観た人が異口同音に言うように、素敵な爽快感♬(ウルウル😂付き)。類例を思いつかないほどの。

ケネディ大統領時代NASAで有人宇宙飛行プロジェクトに貢献した黒人女性の物語。

宇宙開発よりも何よりも、人種 民族 性別 障害等々の属性ゆえにスタートラインに立てない状況を是正していくことこそが 社会の進歩
というメッセージを感じたのは、私がかねがねそう考えているからかもしれません。
(スピードの遅さはあるにせよ、日本も徐々には是正されてきていると言えると思います。だから、昭和はよかったとか江戸時代再評価とかの向きもありますが、このメルクマールに照らせば そないなことはあるハズもないかと。部分的によいところはあったにしても。)

↑と書くと 小難しかったり退屈だったりのいわゆる社会派映画をイメージされたかもしれませんが、さにあらず。起伏に富んだ展開、スピード感、わかりやすさ(いい意味で)、の三拍子揃いまくりでした。

 

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シリーズ最高作?!「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」

   土曜夜BSで見た「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」は全48作の中でとても珍しい作。

   と言うのも、振ることはあっても振られることはあり得ない美しすぎるマドンナたちの中で本作のいしだあゆみは振られる(新進陶芸家に)ところから始まるので。

   しかも最後にはよりによって寅にも「振られ」る(振るとか振られるという単純な心の揺れではモチロンないが)。

   彼女が「よりによって」寅に求愛するワケ、、、その目に(心に)「見えて」いたのは車寅次郎だったのか「寅さん」だったのか。

   彼女と別れた寅が妹さくらに「あんなに美人でしかも賢い人が俺をどうこう思うわけないだろう」。泣かせるね(いつもながら)。

   改めて見て(いったい何度目^^;)、シリーズ最高作かもと思った。

   まったり感とスピード感の按配絶妙。笑い所盛りだくさん(ソレは全作共通だけど)にしてワキには最高級の喜劇役者(と思う)柄本明も。

   紫陽花寺で寅を待ち受ける彼女のなんと綺麗なこと! 

   そして、その名の通り境内に咲き誇る紫陽花と とらやでのシーンに何度も映り込んでいた庭に咲く数輪の紫陽花と。

www.tora-san.jp

 

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ホリエモンの言う通り!?

刑務所で視聴が許される番組の一つがNHK日曜昼の のど自慢、ひじょうに高い頻度で「かもめが翔んだ日」が歌われる
堀江貴文氏が獄中日記で書いていましたが

たしかに時々見るたびに! 今日も 15番目の女性♬

カミュ『異邦人』の、直訳?意訳?超訳?

カミュ『異邦人』で、ムルソーが供述した 殺人の動機は
あまりにも印象深い「太陽が眩しすぎたから」・・・
ところが、新潮文庫平成26年改版では「太陽のせい」という訳に変わっていました。

ネットと辞書で原文と訳を調べてみました。(私、フランス語ワカリマセン。)
原文C'était à cause du soleil
=英語ならIt was because of the sun
つまり、今の訳のほうが 正確と言うか原文忠実と言うか、なのですね。

だけど
私どもの年代が親しんだ訳は、たとえば学校の試験なら◯は付かないのでしょうけど
「太陽のせい」なら眩しいか暑いかしかないわけですし
なにより、あの訳だったからこそいっそう深く心に刻まれる小説たり得たのでは???

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「呪いのわら人形」

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東京 上野、東京国立博物館の東洋館で「マジカル・アジア」開催中。大量の所蔵品をコンセプトに合わせて配列した趣です。
その中に明治時代初期、上野公園のイチョウに打ち付けられていたという わら人形が。頭も心も全身が憎恨呪のカタマリになっていただろう無名の「作者」さん、マサカ名だたる美術品に混じって堂々と展示されようとはユメにもウツツにも思いもしなかったコトでしょう。

わら人形と言い「マジカル〜」なるタイトルと言い 珍奇っぽいモノばかりと思われるかもしれませんが、大半は↓のようなオーソドックスな品々です。あ、展示 今日までの作品が少なくないもよう 悪しからず。(ほとんどが撮影OKでした。)

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www.tnm.jp

戦闘機乗りから国語先生に へんしん

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    「仮面ライダー」は今も続くらしい超ロングランゆえ たまに耳に入るたび思い出すのは、、、

    「へんしん」を「変針」(と黒板に書きながら)だと思っていた、と我が中一のとき松本先生が国語の授業中に。

    先生はその理由も話したが そのときは意味が分からずそのままずっとスルーしていたけれど、

    やっとこさネット辞書で調べた→変針=針路を変えること。方向・方針を変えること。

    ナルホド藤岡弘の変身!ポーズを思い浮かべると針路を定めたように見えなくもない。先生が話した「理由」もそんなことであったのだろう。

    数少ない 好きな先生の一人だった(ワタシを好きな先生はもっと少なかったろうが)が、

    先生の口グセは「元戦闘機乗りは素早いんだっ」。

    ワタシは子どものとき 日本の戦争はなんとなく大昔のハナシみたいに思えていて、

    中一だったのは1971年。40代半ばに見える先生に戦争体験⁇? ピンとこなくてホラじゃないか?ぐらいに思っていた。

    後年、戦闘機乗り(に限らず兵士)にはハタチそこそこが多勢いたというあまりにも痛ましい事実を知る。マンガ『紫電改のタカ』(ラストで特攻死)も含めて。

    だから 紛れもなく松本先生も「計算」が合っている。

    その松本先生のとき↓ 

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