行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

小川洋子『ミーナの行進」

1972年、朋子は中一の一年間を小六のいとこミーナの家で暮らす。二人はすぐ仲よしになった。姉妹のように。そして、ポチ子と三姉妹のように。池付きの広大な庭のあるミーナの大邸宅で飼われるコビトカバのポチ子と。朋子にとってミーナにとってかけがえのな…

ボブディラン

なにかとオクテだった私が、その名を初めて知ったのはガロ「学生街の喫茶店」の歌詞で です。 たしか他にも その名が歌詞に入っている60〜70年代あたりの曲、あるよね? この機会にまたプチ流行るかも。 そう言えば、毎回有力候補と言われる(実際のところホ…

中島京子『長いお別れ』

8編から成る連作短編集です。2015年刊行。ミステリーの古典たる チャンドラーの同名作とは全く関係ありません。(著者の直木賞作『小さいおうち』は 古典的絵本「ちいさいおうち」と関係大ありでしたが。) 主人公(と言うべきか)は、認知症がドンドン進行…

森健『小倉昌男 祈りと経営』

私が新米営業マンだったときに担当していたヤマト運輸には、仕事はアグレッシブ、人柄は人間味溢れる社員がおおぜいいた。同社の中興の祖として知られる小倉昌男氏が社長を務めていた時期である。本作を読んで、なるほど!小倉イズムでもあったんだなあと感…

「戦犯裁判」を知り、考えるために

写真左は2009年、右は2010年刊。日本経済新聞出版社。 日経新聞の井上記者が、今世紀になって国立公文書館で初公開された裁判記録を中心に史資料を読み解きます。さすがは大手新聞のベテラン記者と言うべきか、膨大な史資料を手際よく配し、文章もたいへん分…

新書あれこれ

新書の老舗を一つ挙げるなら岩波、二つ挙げるなら岩波と中公、三つ挙げるなら岩波と中公と講談社、と言えましょうがその講談社現代新書の装丁、いつの頃からかシックな(または味も素っ気もない)モノに変わりましたね。前のヤツの方が好きだったなあ。*写…

三木卓『K』

同年代のあいだでは結婚何周年の話題がときどき出ますが 刊行された2012年に評判になった三木卓『K』は 「Kのことを書く。Kとはぼくの死んだ配偶者で~」と書き出され 何十年間も夫婦であった妻に対する心情と 夫が想像する、妻の心情が綴られています。 …

津村記久子『うそコンシェルジュ』

『新潮』9月号で、津村記久子を初めて読みました。 二段組19ページの短短編。「うそを見破れないけれども、うそがばれたこともない」と冒頭で語る小林みのりは、30代半ば(『コンビニ人間』主人公と同年代)の「仕事に疲れた地味な女」。姪から「うそコンシ…

珠玉のラスト☆平野啓一郎『マチネの終わりに』

なんとなく平野啓一郎は難解(文章も内容も)と思い込んでいたが、本作は さにあらず だった。新聞小説だからか やっぱり単なる思い込みだったか。 ひとことで言うとしたら恋愛小説 であろう。アラフォー同士の、クラシックギタリストの彼と、フランス通信社…

岸政彦『断片的なものの社会学』

タイトルを見てどんな中身を想像されるでしょうか。社会学の専門書(とは思わないでしょうけど)? 社会学の一般書? 社会学者による軽めのエッセイ? どれも違います。 1967年生まれの社会学者たる著者が行なうたくさんの聞き取り調査で得られた語りには …

ラグビー本

サッカーとともに わが愛するフットボールであるラグビーの 書き手たちはナゼか凝った文章が多くて、、、 その点、村上晃一氏はとってもイイ。 アタマの中だけでこねくり回したようなシロモノでなく、(いい意味で)ケレン味ゼロの文章。 ラグビーにとどまら…

『あしたのジョー』

小学生の頃おこづかいを『少年マガジン』だけに費やしていた。一冊60〜70円の時代。ギャグの二本柱「天才バカボン」と「パットマンX」に毎週大笑いさせてもらったものだが、なんと言っても最大のお目当ては「巨人の星」だった。 「あしたのジョー」もワクワ…

沢木耕太郎『流星ひとつ』

『テロルの決算』『敗れざる者たち』『一瞬の夏』。私より一世代上にあたる沢木耕太郎が20〜30代で書いたノンフィクションを 若いころ読んで、瑞々しさと「老成」に魅きつけられたものです。(後者はふつう褒め言葉ではないでしょうが、ココは褒め言葉で。)…

群像新人文学賞・崔 実『ジニのパズル』

1998年ミサイル発射実験が行われたとき朝鮮学校の中学生だった彼女は「政治」とド正面から「対峙」する、ある行動を起こす。著者自伝的なのであろう(たぶん)。 70年代に10歳代であった私は(浅い)正義感(浅い理解に基づく)から 政治に(浅い)関心を持…

この半年間でとりわけ印象深い本

miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com

英国だからこその⁇国民投票

「スピーチを米国人はジョークから始める。XX人は〜から始める。日本人はお詫びから始める」(©︎故河合隼雄氏)みたいに国民性を風刺した小噺、世界中にイロイロあるよね。 そのうちの一つ、初モノに直面したとき「英国人は、家族全員でおごそかに投票で決定…

『評伝 ナンシー関』

横田増生著、朝日新聞出版、2012年発行。「評伝にするほどの人?」から「待ってました!」まで反応は別れるかもしれませんがワタシはダンゼン後者です。02年に早逝したナンシー関。消しゴム版画という秀逸なアイディア、出来もインパクト抜群。毒含みの切れ…

「日本史の謎を地形で解く」

本を読んで目からウロコが落ちるのはナゼかたいてい電車の中!?という私自身のナゾはさておき 最近の 目からウロコは、「日本史の謎は地形で解ける」シリーズ。(いい意味で)電車で読むのに適した、ほど良い「軽さ」。モチロン文庫本なので物的にも軽い。…

西村賢太の私小説

私が西村ブシを好むのは そこはかとないユーモアが漂う(と言うほど上品ではないけど)文章もさることながら何と言ってもオノレそのものを丸ごと書き込んでいるからです。それは多少なりとも大げさであろうロクデナシ振る舞いの描写のことに非ず品性の卑しさ…

なぎら健壱『日本フォーク私的大全』

元祖ゆるキャラ? テレビで微妙な存在感の なぎら健壱は元々はフォークシンガー(を知ってる私のトシが分かる^^;)。 60年代70年代 フォークに魅せられて自らもシンガーソングライターになった著者が、その時期のフォークシーンを概観する。バッチリ索引付き…

時節柄

こないな本を持ってます^^;

ドリアン助川『あん』

タイトルのあんは餡です。 著者はテレビで何度か見たことがあり、まっすぐ そうな人だなという印象を持っていました。書いたものを読んだのは初めてです。 とても「気」のいい作品でした。あるいは小説としての練度は高いとは言えないかもしれませんが、そな…

バルガス・リョサ『つつましい英雄』

海外小説は登場人物の名前だけで性別がワカラナイこと少なからずがちょいとツライ^^;(英語圏のはまだしも) マリオ・バルガス=リョサ『つつましい英雄』は南米文学テイスト満載と言えるであろう長編だがたとえばマルケス『百年の孤独』と比べると 幻想性は…

三田村蕗子『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?』

ねじり鉢巻き読書より箸休め的読書に適した一冊。お菓子をつまみながらホッとひと息のように♬菓子メーカーの海外展開がたくさん紹介されていますが拡販戦略の精緻な分析、というわけではありません(副題は「海外で成功するローカライズ・マーケティングの秘…

朝と昼の蛍

近所に蛍の小さな生息池があります。今年もそろそろかなあ。闇夜に美しい光が乱舞!というほどの数はいませんけど。 たまたま読んだ斎藤茂吉の短歌に、朝の蛍を詠んだ一首と昼の蛍を詠んだ一首がありました。蛍について何か書くとしたら、ほとんどの人は(も…

漢字はムズカシイ

きょうは「妖怪」が出てこなかったがもっともっとカンタンなありふれた漢字が、手書きで字を書く機会が大幅に減ったために(であろう)ドンドン書けなくなっちゃってる。 漢字のアレコレと言えば、10代のとき小説がらみで・・・①国語のテストで「茶川龍之介…

彼らの歌と句

2015年刊行の左は浅間山荘事件犯、2012年刊行の右は三菱重工ビル爆破犯。二人とも死刑確定者です。 真正面からオノレと向き合わなければ絶対に詠み得ないであろう歌句を見出すことができます。少なからず。 言わずもがなですが、彼らの犯罪にいささかの擁護…

「大関は強い人 横綱は・・・」

強い人は大関になる。宿命のある人が横綱になる。と白鵬。 品格を疑わせるような最近の振る舞いにも何か真逆の含意があるのでは?と思わせられるほど 深い言。 歴代横綱21人にインタビューした本書↓を思い出しました。 武田葉月『横綱』講談社、2013年発行 …

漱石三部作を再読

漱石『それから』をン十年ぶりで読んで代助の父親がとっても気になった。 代助が父親を見るような目で父を見ていた初読のとき今や代助と同年代の息子がいて。 こないなコトも漱石文学の普遍性ゆえ?! というわけで、若いころ読んだ漱石三部作『三四郎』『そ…

おぢのつぶやき4

けさ出かける前、NHK朝ドラで女学生姉妹の妹が ある本を読み終えたとき「目の前の景色が変わった」と。 そういうこと若いころ何度もあったなあ(...("= =) トオイメ) 今や寄る年波 涙腺脆弱化により読みながら目の前がかすむコトしょっちゅうだけど(^^;) (彼女…

佐川光晴『大きくなる日』

涙腺を刺激するツボは人それぞれと思いますが9話中5話で決壊しました。電車の中で^^; 連作短編集。とっても感じのいい 表紙↑のような4人家族男の子の保育園卒園式から 「大きくな」ったとお母さんが実感した中学卒業式までの間、大事件が起きるわけではない…

佐藤航陽『未来に先回りする思考法ーテクノロジーがすべてを塗りかえる』

私が入社した80年代初めにはコピー機が部署ごと一台はなく、ファクス機は(私が知る限りの部署には)まだなかった。30余年後の今や それらをハイテクと思う人はいないだろう(テレックスとかも)。80年代後半からゼロ年代にかけて製作された映画『釣りバカ日…

カズオ・イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』

イシグロ小説は全般に、静かな展開ながらも コクがあるのにキレがある(©むかしのビールCM)描写でどんどんページが進みますが 本作は一転して活劇調。コクキレはそのままに。 クリストファーは探偵。幼いころ「拉致された」両親を救出しなければならない。…

カズオ・イシグロ『浮世の画家』

高名な画家(だった)「小野益次」の1948年からの2年間と戦前期の回想。その時代、多くの画家が描いたような絵を彼も描いた。がために画家「だった」状況になっている。彼を指弾する小説ではない(もちろん、擁護もしない)。そうで「ある」彼の心の揺れのあ…

カズオ・イシグロ『日の名残り』

執事スティーブンスは1956年7月、英国内で6日間の「旅」に出る。その行程中の出来事と ダーリントン卿に仕えていた1920〜30年代の回想が交互に、、、スキもムダもない構成。 「その時代の英国人執事」として想像できそうな?話ではありません(いや超想像通…

カズオ・イシグロ『充たされざる者』

小説を読みながら「早く先を知りたい けど いつまでも終わらなければいいのに」と思うコトありませんか。本作もまさにそうでした。 一作ごとにテイストが異なるイシグロ世界。このヒトこそ(「だけ」に非ず)小説家が天職じゃないかと思う。走攻守三拍子揃い…

小説のクライマックス

私が印象深いのは たとえば 村上春樹『1Q84』の オーウェル『1984年』と真逆的なラスト。(タイトルを見るだけでも ハルキが『1984年』を意識して書いたのは明らかと思います。併せ読みをお薦めします♬) そして たとえばカズオ•イシグロ『充たされざる者』…

ドラッグストアの「匂い」とは@砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』

千恵子がいつも入る近所のドラッグストアには「商品の箱や洗剤がまじったような乾いた匂い」がする(本書5ページ)。 たしかに ドラッグストアってそんな「匂い」だよなあ。小説を読んでいると ハッとさせられる言葉や表現に出会うコトがしばしばあり、それ…

筒井康隆 最後の長編小説

筒井小説たらしめている(と思う)常用語の一つ「のけぞる」がちゃーんと出てきて 私なぞはそれだけでもウレシイ。 著者本人が謳っている通り「最後の長編小説」に相応しい、筒井康隆ワールド余すところなく。ハチャメチャ調(を残しなから)を昇華させた『…

ウナギイヌづくし

『天才バカボン』のこのキャラこそ 赤塚不二夫の「天才」を最も端的に表していると思う。 器は蕎麦猪口です。

天童荒太 私的初読み

その青年は「悼む人」。野宿をしながら全国を回って 誰であれ どんな死に方であれ 「悼む」、、、 2006年から2008年まで『オール讀物』に連載された小説です。 読みながら、 「イスラム国」に殺害された日本人の ジャーナリストの人ともう一人に対するメディ…

75年間のベストナイン

ワタシ 最近は野球をあんまり見ないのでオールドファンというコトになるかもしれませんが 歴代ベストナインを考察(または妄想)するのは 野球好きの大きな大きな楽しみと思います。 本書は、1936年のプロ野球創設から2010年までのベストナインを選出。なつ…

北條民雄(と川端康成)

北條民雄(1914-1937)著『いのちの初夜』は、著者自身と思しき主人公が ハンセン病患者を隔離する病院に入院した日の翌夜明けまでを描いた短編小説。その1930年代当時は医療水準上も社会通念上も「不治の病」であった。「何もかも奪われてしまって、唯一つ…

武田葉月『横綱』講談社、2013年発行

45代横綱の初代若乃花から70代の日馬富士まで、存命中の21人にインタビュー(「二人」を除いて)。白鵬と日馬以外は引退後。 読み応え最大級。(元)横綱たちが言った通りを聞き書きするスタイルにつき事実関係に?と感じるところがいくつかありましたが ソ…

ゲージツ家のクマさん

むかし、ビートたけし(北野武)の「たけしの誰でもピカソ」(テレビ東京)でレギュラー出演していたゲージツ家のクマさん。「オレは芸大にコンプレックスを持っているんだ!」と冗談9割本音1割のテイで言ったシーンをナゼか今だに覚えています。 期待以上の…

「◯金」「◯ビ」の80年代ベストセラー

本棚の整理。渡辺和博とタラコプロダクション『金魂巻』。80年代のベストセラー、◯金 ◯ビ が流行語にもなったコレ、どうしようかなあ。 わが修士論文『「戦後民主主義」とは何だったのか』の中で本書のことを こう↓書いていた。 「ビンボーの人」を揶揄する…

薬嫌い病院嫌いで白寿

小説を読んでいると、知っている人にそっくりなキャラがたまに出てくる。この間は、痛いときには何でもかんでも「タイガーバーム」を塗るおばあさんが。スジガネ入りの病院嫌い薬嫌いだった亡き祖母(享年99)もそうでした。人の見舞いも含めて病院に足を踏…

ゲゲゲの人生哲学

水木しげる『人生をいじくり回してはいけない』日本図書センター、2010年 一見 いわゆる自己啓発本かのようなタイトルですが、「いわゆる自己啓発本」ではありません。言わずと知れた『ゲゲゲの鬼太郎』の漫画家である著者の 人生観を端的に表す文を引用しま…

極私的『走れメロス』

『走れメロス』は中学国語の教科書に載っていました(全文ではなかったかな)。高校に入って最初の夏休みに 私的太宰2作目の『人間失格』を読み、あまりにも「違う」ので?!?でした。 その数年後、野田秀樹率いる劇団 夢の遊眠社の初期作「走れメロス」で…

太宰治を

江國香織、角田光代、川上弘美、川上未映子、桐野夏生、松浦理英子、山田詠美、 奥泉光、佐伯一麦、高橋源一郎、中村文則、堀江敏幸、町田康、松浦寿輝 という錚々たる面々が一篇ずつ選んだ。 選んだ太宰作品に選者が ごく短い紹介文を沿えていて、レトリッ…