ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

亡き西村賢太 正真正銘のラスト新刊!?

人物はありし日の著者 この2月に急逝した西村賢太氏。5月30日に未完の小説『雨滴は続く』が刊行されましたが、6月25日に書評集『誰もいない文学館』(本の雑誌社)が刊行されました。再刊や文庫化を除く新刊としては氏最後の出版になるかもしれません。 本作…

『ソ連兵に差し出された娘たち』

「ソ連兵に差し出された娘たち」・・・満州に入植していた日本人の娘たちが、戦後に満州を占領したソ連軍の兵士たちからどう扱われたか。ご想像の通りです。 80〜90歳代になった娘たちや他の入植者たち(遺族を含む)の証言を積み上げて事実関係を明らかにし…

仏教界の戦争協力

協力という言葉では軽すぎるほどの前のめりぶりも含めた様々な事実が論及されている。鵜飼秀徳著『仏教の大東亜戦争』文春新書2022年7月発行。 1980〜90年代に各宗派は戦争加担を認めて謝罪したが、反省・悔悟が十分であるとは思えない、と著者は問いかける。…

『土葬の村』

本書で言及されている通り、土葬が法律で禁じられているわけではありません。(東京などの大都市では条例で禁じられています。) とはいえ実際には全国で火葬率99.9パーセント以上。しかしコンマ以下であれ、そして急減し続けているものの、土葬は現存します…

『特権を問う ドキュメント・日米地位協定』

毎日新聞取材班著、毎日新聞出版2022年7月発行 軍用ヘリコプターが東京都心部などで低空飛行。米兵による刑事事件に警察の捜査がままならない。日米地位協定に基づく在日米軍の「特権」を全国各地で追った調査報道です。協定の取り決めを超える「特権」が在…

『障害者たちの太平洋戦争 狩りたてる・切りすてる・つくりだす』

本書の第一部は「戦争は障害者を選別する」。 視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者、知的障害者は太平洋戦争中どうであったか? どうであらされたか? 知られざる、そして知るべき事実です。 第二部「戦争は障害者を生みだす」。 空襲で重度の後遺障害を負…

三万冊もあればこそ

30,000冊もあれば、そのときどきの時宜を得た本も必ずあることでしょう。つい先日亡くなったゴルバチョフ氏の・・・ そしてまた個人的な思いに触れる本も・・・ 懐かしや! 小学校の図書室にあったルパンとホームズのシリーズ。 『サザエさん』原作はけっこ…

さてココはどこでしょう?

蓼科親湯温泉のホテルにある「岩波文庫の回廊」です。岩波書店創業者が諏訪出身のご縁とか。 ホテル内には本、本、本(岩波に限らず)。古今東西のありとあらゆる本が約3万冊、居並んでいます。

朴裕河 著『歴史と向き合う 日韓問題ー対立から対話へ』

2022年7月発行 日本語もすこぶる堪能な著者。 日韓両国語版のある前書『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』は「何よりも、韓国の人々に読んでほしいという気持ちが強かった」(本書「はじめに」)ので韓国で先に刊行されました。 本書は日本で先に出版。…

河合隼雄『大人の友情』

オノレを振り返ると、一生モノと思っていた10代からの友とアラフィフから疎遠になっちゃったり、アラフィフからの偶発的な友と昵懇になったり。いろいろです。やっぱり我ら人間はナマモノだから!? 直球タイトル『大人の友情』。著者は言わずもがな、広く知…

丸谷才一『合本 挨拶はたいへんだ』

丸谷才一氏が結婚披露宴や葬儀や授賞式等々で行った祝辞や弔辞や謝辞等々のスピーチを集めた一冊。 1988年発行『挨拶はむづかしい』と2004年『挨拶はたいへんだ』が2013年に合本されました。 何十年も前ですが、丸谷氏のことを私は「旧かなづかいに拘る頑固…

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか』

落合博満氏が中日ドラゴンズ監督であった8年間にわたって番記者だった著者が、氏の内面によくぞここまで!肉薄した人物評伝。鈴木忠平著、文藝春秋社、2021年発行。 現役時代の自身がそうであったように、氏は選手たちに技術をとことん磨き抜くよう求めまし…

西村私小説ワールドに相応しすぎる追悼特集! 『文學界』さん、い~い仕事してますね!!

遺作で岡惚れした「久子」の手記、準レギュラー「新川」の回想・・・我ら西村賢太ファンに絶対のオススメです。 この『文學界』は前号なのでまずは図書館で。図書館借りする読者にもまた「貫多」は(賢太がエッセイで、だったかな)は口撃を加えていましたが…

山極寿一X小川洋子『ゴリラの森、言葉の海』

霊長類学者として、小説家として、名高い二人の対談です。 山極さんは後書きで「(小川さんにとっての)言葉の森と(山極さんがフィールドワークする)自然の森は似ている」と。「どちらの森でも、僕たちはストーリーを求めて彷徨っていることに変わりはない…

『「ナパーム弾の少女」五十年の物語』

ある年齢幅なら誰もが見覚えのある、ベトナム戦争を捉えた写真。 当時9歳のベトナム人少女キム・フックさん。1972年6月8日、ナパーム弾によって着ていた服はすべて吹き飛ばされ、全身にわたる火傷を負いました。 絶望的な容態。担ぎ込まれた病院を転院させら…

『読む時間』

読書大好きにして動物大好きな私にとって ↑は垂涎の「時間」です。 世界五大陸各国の、名もなき120人余りの様々な「読む時間」を捉えた写真集。本や新聞や雑誌を 家で教室で車中で公園で街角で、椅子に座り地べたに寝そべり柵にもたれて立ちながら・・・人間…

吉開章『ろうと手話 やさしい日本語がひらく未来』

外国人への日本語教育に取り組む吉開章氏。日本語が第二言語という点で外国人と聾者は共通するとの認識を得て、氏が実践している「やさしい日本語」を聾者とのコミュニケーションにも!と提唱します。 「やさしい日本語」、具体的には「ハサミの法則」すなわ…

『世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか』

『毎日新聞』海外支局の記者による7カ国のリポートを収録。少子化は世界的課題ですが、国によって様相が異なることが分かります。 2021年の合計特殊出生率が0.81と日本の1.30を大きく下回る韓国。その背景には日本以上かもしれない「若者の生きづらさ」があ…

西村賢太 絶筆

今年2月に54歳で急逝した西村賢太氏。月刊『文學界』に連載中だった『雨滴は続く』が5月30日に文藝春秋社から発行されました。 いつもながら、氏自身と思しき私小説家 北町貫多が主人公の私小説。 いつもと違うのは分量です。短編が多く、長編でも最長200ペ…

立花隆『インディオの聖像』

故立花隆氏は1986年暮れから20日間ほど南米に赴き、16〜18世紀のスペイン人キリスト教聖職者たちによる伝道の跡を取材しました。 本書では1987年発行の雑誌に掲載された短い文章二つと、30数年前に刊行予定だった長めの未発表文章一つを収録。 取材と「(氏…

『立花隆 長崎を語る』

2011年と2015年に長崎で行われた立花隆氏の講演録に加えて、現長崎市長や 立花氏と仕事を共にしたメディア人らの氏にまつわる回想等が収められています。 1940年に生まれた氏は2歳まで長崎市内に在住しました。原爆が投下されたのは、その3年後です。大学生…

和えると混ぜるは違う

「混ぜる」と「和える」は違う、和食では「混ぜる」はなくて全部「和える」、ある人が「ミックス」と「ハーモニー」と訳してくれた、と土井善晴氏。 料理研究家土井善晴氏と政治学者中島岳志氏の共著「利他と料理」ミシマ社、2020年12月発行 中島岳志氏の大…

ガラパゴス化なる比喩は間違い 福岡伸一『生命海流 GALAPAGOS』

ハカセこと福岡伸一氏が2020年3月4日から8日までガラパゴス諸島を回りながら陸で海で考えた一冊です。 各大陸が何億年も前から成立していたのと比べて、大小さまざま100以上の島からなるガラパゴス諸島は数百万年前〜数十万年前の海底火山隆起による地球史的…

丸山正樹著「デフ・ヴォイス」シリーズ新作

丸山正樹氏の小説「デフ・ヴォイス」シリーズ4作目『わたしのいないテーブルで』を読みました。2021年発行の長編です。 タイトルは「ディナーテーブル症候群」を含意しています。「ろう者が聴者の家族の会話に十分参加できず、疎外感を覚えている状態」を指…

私小説家西村賢太氏 急死

4日前に死去した石原慎太郎氏の追悼文を3日前の『読売新聞』に書いていたばかりでした↓。https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220201-OYT8T50129/ 私小説上は暴飲暴食ぶりをサンザン書いていましたが。刊行された小説を全作 読んでいます。感想を何度も書い…

ポルトガル人宣教師に16世紀日本はどう見えたか『ヨーロッパ文化と日本文化』

16世紀戦国時代に何十年間も布教を行なった キリスト教ポルトガル人宣教師ルイス・フロイスが、豊臣秀吉による禁教令が発布される前の時期に日本社会のあれこれを観察して著した。 こんな具合に・・・ ヨーロッパ人は大きな目を美しいとしている。日本人はそ…

空襲を「きれい」

miyashinkun.hatenablog.com 山梨県韮崎市で生まれ育った大村智氏が10歳のとき、空襲警報で避難した近くの城山から甲府市に焼夷弾が落とされて焼けているのが見えて「明るい花火を見るような気持ちで『きれいだな』と言った」(『私の履歴書』↑)。 『文藝春…

ノーベル賞大村智氏の「履歴書」

大村氏は「おわりに」で、「歩んできた道を振り返ると、すべての中心に(中略)趣味があった」という「私の心得」を図解して載せています(↑一部省略して転記しました)。 美術鑑賞とゴルフが心身の健康や一期一会に資し、研究や社会貢献とも大いにかかわっ…

トラは何色?

昨夜のNHK「ダーウィンが来た」はトラ特集。その中で「トラは何色?」というコーナーがあり、街頭でアンケートを取ると、ほとんどの日本人は「黄色」と答え、ほとんどの西洋人は「オレンジ色」と答えました。私も問われたら「黄色!」と即答したと思います。…

『うんち学入門 生き物にとって「排泄物」とは何か』

数多の星新一傑作ショートショートの一つ、『親善キッス』。宇宙飛行を続ける男たちはある惑星に降り立つ。其処は地球のように文明が発達していて「宇宙人」たちの容姿も地球人そっくり。一計を案じた彼らは「地球ではキスが親善のしるし」と称して「美女」…