ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

一昨年のきょう凶弾に斃れた中村哲氏『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』

中村哲著『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』NHK出版、2013年発行 内戦や他国からの干渉よりも、もっと農業国アフガニスタンの人々を苦しめたのは度重なる旱魃であった。農民たちは難民化流民化せざるをなくなり、いきおい健康も損なわれる。医師で…

「このタコ!」はタコに失礼

miyashinkun.hatenablog.com 魚類に至るまであらゆる脊椎動物は「意識」を有するのでは?の一環としての幸田正典氏の実験結果↑に対して、動物行動学の第一人者ヴァール氏↓は当初懐疑的だったが 今や絶賛しているとのこと。 miyashinkun.hatenablog.com 本書↑…

『ピュリツァー受賞写真全記録 第2版』

言わずと知れた報道写真最高峰の、1942-2015年の受賞作品が網羅されました。 編著者のハル・ビュエル氏が作品各々に対して文章を書いています。撮影者がどのようにして決定的瞬間を収め得たかに加えて、そのシーンはどのようなニュースであったかが記されま…

魚はバカじゃない!?

幸田正典著『魚にも自分がわかる 動物認知研究の最先端』ちくま新書、2021年10月発行 ここ数年の間で得られた研究成果なので学界の定説までにはまだ至っていないようですが、私たちのイメージを大きく覆す内容です。 私たちが思う脊椎動物の「ヒエラルキー」…

『人体大全』

『人体大全』 ビル・ブライソン箸(桐谷知未訳) 新潮社 2021年発行(原著2019年) 頭のてっぺんから足の先まで、体表から体内隅々まで、そして体内微生物や細菌、さらには受精すなわち生まれる前から死ぬと体はどうなるかまで・・・まさにタイトル通り網羅…

堀川惠子氏の新作ノンフィクション『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』を読んで

かつての反戦系映画で旧日本軍(特に陸軍)の現場司令官クラスを演じるのはしばしば「粗暴な」「人相の悪い」悪役俳優でした。分かりやすすぎでは?と思ったものです。(逆に旧軍のあれこれを美化する作もまたあった。) 2000ゼロ年代の米国パウエル国務長官…

「捨て猫だったタマ、よくわが家を選んで来てくれてありがとう」(横尾忠則)

『タマ、帰っておいで』、絵と文 横尾忠則、講談社、2020年発行。 15年間ひとつ屋根の下で暮らしたタマが2014年5月31日に息を引き取ります。横尾は数時間後に亡骸を描き、そして4日後から6年間にわたって生前のいろいろな様子を思い出しながらタマの肖像画を…

『たとへば君 四十年の恋歌』

故河野裕子氏と永田和宏氏夫婦は歌人として知られ、永田氏は細胞生物学者としても知られています。 知り合った学生時代から2010年に河野氏がガンのため64歳で亡くなるまで40年間に二人が詠んだ計380首、そのときどきの河野氏エッセイが収められ、冒頭と末尾…

『人は死ねばゴミになる』

「小春寒 もすこし生きて いたくなる」ガンを告知されて4ヶ月後そして死の6ヶ月前の、1987年11月25日に著者が詠んだ句です。 著者の伊藤栄樹氏は検事総長在任中の1987年7月29日にガンを告知されました。亡くなった1988年5月25日までの記録です。享年64。 198…

イシグロ、ノーベル文学賞受賞第一作

カズオ・イシグロの長編小説『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房、2021年発行。 近未来、人工知能を搭載したロボットであるクララの一人称。 クララはAF(人工親友)なる製品の一体です、と書きながら「いやいや一体ではなく一人? 製品ではなく人間…

『電線絵画』

日本初の電信柱・電信線が描かれた樋畑翁輔による幕末期の一点「ペリー献上電信機実験当時の写生画」(1854年(嘉永7年))を皮切りに、明治初めから現代までの 本書タイトルで「電線」と総称される電信柱・電力柱・架空線が描かれた絵画100数十点を収録。2021…

サンデル教授が考える「アメリカンドリーム」

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル著、鬼澤忍訳、早川書房、2021年発行(原著は2020年) 頑張れば報われるという(ことになっている)「能力主義」は文字通り誰にとってもの正義ではないという観点から議論が展開されています。 原題…

立花隆氏最後の著作

『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』、文春新書、2020年発行。 自分史語り下ろし。「自分史」と言っても「あのときこう思った」調ではなく、数多い著書と手がけたテレビ番組をコンパクトに紹介しながら書かれざる執筆意図や…

6年前の立花隆氏『死はこわくない』

「私は今年七五歳です。足腰は衰え、昔のように走ることも、階段を駆けあがることもできなくなりました。ついこの間も、食事中に下の歯の一部が欠けてしまい、老いの進行を強く感じました。同級生たちも次々と死んでいますし、自分より若い人も亡くなってい…

識者と一般人に温度差?小池百合子都知事支持率

小池氏支持率57%、五輪対応評価割れる 朝日世論調査(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース どちらの政治的スタンスからも強い批判や非難に晒されているにしては支持率が高いように感じます。 とりわけ目につく人格批判の元になっている一つが、ベストセラー…

山田五郎の初小説

テレビでよく見かける山田五郎氏による自伝的小説。幻冬舎、2020年発行。 タイトルの「真夜中のカーボーイ」は、1960~70年代の映画界を席巻したアメリカンニューシネマ代表作の一つ。著者自身と思しき「俺」は高三の夏、大阪梅田の名画座で「俺たちに明日は…

『ちあきなおみ 沈黙の理由』

わが高校のラグビー部でラインアウトのサインが「山口百恵!」「桜田淳子!」だったほどに何を隠そう私は「中三トリオ」と同学年。そんなアイドルブームのさなか、1972年レコード大賞を獲ったちあきなおみの歌唱力は質が段違いなのは中ボウにも分かったもの…

インド製ハンドメイド絵本『世界の始まり』

民族や宗教によって様々な創生物語が伝承されていますが、この本で語られる中央インド・ゴンド民族の「世界の始まり」は水→大気→泥の順に現れます。 ゴンド民族のアーティスト、バッジュ・シャームが描くハンドメイド絵本『世界の始まり』(原題『Creation』…

大竹英洋『ノースウッズ 生命を与える大地』

先日NHKニュースで紹介されていた、カナダの大森林地帯を撮った写真集(アイワード、2020年発刊)。大竹英洋氏が20年間にわたって撮影した数百枚が収められています。四季の昼と夜、大地と川と湖と空、たくさんの動植物。雄大にして美しくも厳しい、森の生き…

インド製ハンドメイド絵本『太陽と月』

ハンドメイド絵本とは? まず、手触りがとても心地よい、その紙が手製とのこと。添付されている説明ペーパーによると、原料は布。「南インドの製紙工房にて、不用になった大量の木綿の端切れを水と一緒に細かく砕き攪拌して、液状になったものを漉いて紙にし…

『コルタサル短編集 悪魔の涎・追い求める男 他八編』(木村榮一訳)

ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』『百年の孤独』でイマジネーションの海に心地よく溺れて以来、たま〜に南米文学を読みたくなります。本書の著者フリオ・コルタサル(1914-1984)はアルゼンチン人です。 読み進めるうちに、あれ? 「今」はいつ…

『超えてみようよ!境界線 アフリカ・アジア、そして車イスで考えた援助すること・されること』

そう言えば前世紀のことですが、入社前は野球強豪の高校と大学で⚾️を追いかけていて「アフリカの子供たちに野球を教えたい」と退社して海外青年協力隊に飛び込んだ同僚がいました(モチロン活動は「野球を教える」だけではないでしょうけど)。野球を愛し、…

津村記久子『サキの忘れ物』

津村記久子著2020年発刊短編集の表題作「サキの忘れ物」。18歳太田千春は高校を中退して喫茶店で働いている。あるとき、毎日のようにやって来る「母親よりは年寄りで、祖母よりは若く見えた」女の人が本を置き忘れた。表紙の写真は「鼻が高くてとがった、二…

『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』

アップルの創業者ジョブズ(1955-2011)が時に哲学的な発言をしたことは知られています。それは彼が師事した禅僧及川弘文(1938-2002)の影響が大である、と本書は伝えます。ただ、著者は31人にインタビューしていますが、ジョブズと弘文の関わりについて証…

船橋洋一『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』

2011年3月の福島第一原発事故をめぐるドキュメント。2012年に著されて大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』にその後の取材を加えて今年2月に文藝春秋社から発行されました。 新たに付けられた序章の見出しは「フクシマはな…

コロナ禍医師の短歌集 犬養楓『前線』

「医療従事者が目の前の出来事に、どう向き合ってきたかをこの禍が過ぎ去ったあとにも残しておきたいと思い、歌を詠んだ」(あとがき)歌人でもある 救命救急センターの若手医師が、一昨年末の感染拡大前夜から第三波ただ中の今年年明けまで、患者の死にも何…

いとうせいこう『ガザ、西岸地区、アンマン 「国境なき医師団」を見に行く』2021年1月発刊

小説を含む幅広いクリエイターいとうせいこう氏が、国境なき医師団の活動を「見に行」ったルポルタージュの3作目です。本作は、2019年11月にイスラエルのパレスチナ自治区ガザ→西岸地区→ヨルダンの首都アンマンの順で取材しました。アンマンの病院は中東各国…

国境なき医師団、いとうせいこう

前作では「あくまで作家のやり方で脱線や私的こだわりを」交えながら「俺」が見た2016~2017年の4か国での現地活動が綴られました↓ miyashinkun.hatenablog.com 本作『「国境なき医師団」になろう!』は4か国に2018年の南スーダン活動を加えると共に東京の事…

聴導犬ー耳が聞こえないユーザーとの良きパートナー

日本聴導犬推進協会の訓練士とユーザーと聴導犬たちの実話です。 犬と暮らした経験がある人なら私を含めて誰でも「人が喜ぶことが犬の喜びにもなる」を実感したことがあると思います。そうした犬の特性を生かした様々な「お役目」の一つが聴導犬です。 なの…

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』

2020年発行の短編集。収録されている5編とも小学生が主人公です。著者の後書きによると、「ああだこうだと悩みながら考え」て「自分だからこそ書ける、少年たちの小説」をつくりあげた、とのこと。表題作における主人公のワケあり同級生の決めセリフ「僕はそ…