行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

映画「男はつらいよ」

☆寅さん!☆1969年~95年公開

 「男はつらいよ」シリーズを全48作なんども見ているが、わが息子が社会人になってから「分かった」ことがある。

 寅さん。「高嶺の花」に次々と惚れまくるわ、正業にはつかないわ、たまに実家の団子屋の店番をしても注文の電話を叩き切ってしまうわ。

 と並べると家族にとってただの厄介者でしかないが、実は「かけがえのない」存在。

 テキヤ仕込みの座談が愉快で夕餉が楽しくなる(たいてい最後は喧嘩になるが)といったことももちろんあるがそれ以上に、何かとお粗末極まりないだけに自分を超えることが決してなさそうだから。家族にとってそれがすこぶる心地よい。

 息子に超えられつつあるかもしれないことを薄々感じつつある(背はとっくに抜かれたが)このごろ、そこが「分かった」。

 このシリーズ、とりわけ面白いのが初期の作品だ。妹さくらの見合いの食事の席で得意の口上「尻の周りはクXだらけ」(第1作)、ご馳走を食べすぎて(!)入院した病室で乱痴気騒ぎ(第2作)、旅行社に金を持ち逃げされてハワイに行ったふりの居留守(第4作)等々若々しい寅さん=渥美清(40代前半)のハチャメチャが際立っていて。思い出すだけで笑ってしまう(もちろんメイ場面は中期作にも後期作にも枚挙にいとまがないが)。

 もう一つ初期が好ましいのは、彼の稼業は裏社会との連なりがあるのをはっきり示していること(例えば第5作で「世話になった親分」の死)。作を重ねるにつれ、露店を構える「権利」はどうやって?のような疑問は持たない「お約束」が出来あがっていく。

 沖縄に行く手段として庶民は飛行機を思いつかない(寅がリリーの病床に駆けつける第25作)、「よき昭和」を描いたメルヘン映画とも言えよう。戻りたいとは思わないが。ウォッシュレットのない時代に