堀川惠子『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』文藝春秋、2015年。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。
おすすめ と 特おすすめ があるとすれば、断然 後者です。戦後70年の5月に刊行されたノンフィクション。必読とまで言い切りたい。
広島市平和記念公園の片隅にある原爆供養塔を「守って」きた老婦人(自身も いわゆる入市被曝。20人以上の親族を失う)を軸に、塔にねむる 「氏名」が簿に記された多くの遺骨とさらに多くの不明遺骨をめぐる事実と真実。
1945年8月6日8時15分の瞬間とそのあと地獄絵図が現実になったさまと それからの70年間を当人たち遺族たちから聞き取り(もちろん資料で裏付け)。
そして、「ヒロシマ」に行政(含・占領下)は、私たち一人一人は、70年間どう向き合ってきたか(こなかったか)を深く鋭く。
著者の筆力によりドラマ性にも富んでいて(この言い方は語弊があるかもしれないが)読ませます。
著者略歴によると自身も広島生れ育ちのもよう。そのあたりの関わり(本書では皆無だった)からも別の機会にぜひ掘り下げてほしいとも思いました。