45代横綱の初代若乃花から70代横綱の日馬富士まで、存命中の21人にインタビュー(「二人」を除いて)。69代横綱白鵬と日馬以外は引退後。
読み応え最大級。(元)横綱たちが言った通りを聞き書きするスタイルにつき事実関係に?と感じるところがいくつかありましたが それも含めて「横綱」たる者の心情が浮き彫りになっていて、資料的価値があるとまで言っても過言でないと思います。
表現の違いこそあれ横綱たちが一様に昇進が決まった時点で喜ぶより前に覚悟したと語るのは「地位に相応しい成績をあげられなくなったときは引退するしかない(大関までのように番付を下げて現役を続けることはできない)」ということ。
69代横綱白鵬は昇進時に、白鵬に抜かれるまで優勝回数歴代トップだった48代横綱大鵬から「勝たなければ、引退しかないんだぞ」との言葉を受けました(「横綱は宿命だから、しっかりやってほしい」とも)。
52代横綱北の富士は41代横綱千代の山(11代九重親方)から「引き際をきれいにしよう」、58代横綱千代の富士は北の富士(12代九重親方)から「やめるときはスパッといこう」と、九重部屋横綱同士の師弟間で言い渡されました。
著者は実に様々な話を聞き出しています。
輪湖時代を形成した54代横綱輪島と55代横綱北の湖。輪島が対戦相手を研究するため1970年代ほとんど普及していなかったビデオを使っていたのに対して、北の湖は1985年に引退するまで一度も使いませんでした。「相手によって自分を変えるのではなくて、自分の相撲を崩さないことが大切」だからです。それは、「天才」と言われた輪島が評する通り「本当の天才は北の湖」の証とも言えるでしょう。
優勝決定戦で67代横綱武蔵丸が膝に重傷を負っていた65代横綱貴乃花に敗れた、あの一番。小泉首相が貴を讃えた「痛みに耐えてよくがんばった。感動した!」に 「俺はがんばってないのかな?」とすごく悲しくなって相撲を辞めようと思った、と武蔵丸は語っています。「ケガをしている相手に対して、どういう相撲を取れっていうの?」とも。
その貴と彼の兄66代横綱3代目若乃花の「二人」がナゼか本書から除かれています。
表紙イラストは、69連勝↓の35代横綱双葉山です。miyashinkun.hatenablog.com
蛇足ながら私がリアルで知っている柏鵬以降朝青龍までの横綱昇進順(カッコ内は本書に登場せず)は
(柏戸)・大鵬→栃ノ海→佐田の山→(玉の海)・北の富士→琴桜→輪島→北の湖→2代目若乃花→三重ノ海→千代の富士→隆の里→双羽黒→北勝海→大乃国→旭富士→曙→(貴乃花)→(3代目若乃花)→武蔵丸→朝青龍 *柏鵬と北玉は同時昇進
これを引退順に並べ替えると
栃ノ海→佐田の山→(柏戸)→大鵬→(玉の海)→琴桜→北の富士→三重ノ海→輪島→2代目若乃花→北の湖→隆の里→双羽黒→千代の富士→大乃国→旭富士→北勝海→(3代目若乃花)→曙→(貴乃花)→武蔵丸→朝青龍 *玉の海は在位中に死去
違った「景色」が見えてくると思いませんか。といったようなアレコレを相撲好きどおし語り合いたいなあ。