行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

北條民雄(と川端康成)

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北條民雄(1914-1937)著『いのちの初夜』は、著者自身と思しき主人公が ハンセン病患者を隔離する病院に入院した日の翌夜明けまでを描いた短編小説。
その1930年代当時は医療水準上も社会通念上も「不治の病」であった。「何もかも奪われてしまって、唯一つ、生命だけが取り残された」 絶望感(の三文字では言葉が軽すぎるほどの)。「ぬるぬると全身にまとわりついて来る生命を感じるのであった。逃れようとしても逃れられない、それは、鳥黐のようなねばり強さであった」。
「ぬるぬると」「まとわりついて」「鳥黐のような」と形容するほど「生命」をネガティブに捉えていたが、5年前から入院している男の「心内に突き出して来る何ものかと激しく戦って血みどろとなっている」姿と直面した「初夜」が明け、「生命(いのち)」をポジティブに捉えんとする。

『北條民雄小説随筆書簡集』が!!なのは『いのちの初夜』等の作品に加えて川端康成との往復書簡が収められていること。1934年の入院3ヶ月後から1937年の死2ヶ月ほど前までの全90通(8割がたは北條→川端)には、北條にとってまさに「いのち」そのものと言える小説に賭ける思い(これまた言葉が軽すぎるが)が表れ、北條作品を世に出すべく川端の尽力も表れている(よく知られる、同じ頃の太宰治へのつれない対応が思い起こされる)。そして『川端康成全集 第五巻』収録の『寒風』で描かれた「焦燥」かつ「憎悪」かつ「自虐」という北條の一面(「全面」と見做す向きもあったもよう)もまた表れている。
『北條民雄〜』には 川端以外に宛てた手紙も収録。大川端(このときはまだ「中」ぐらいか?)に対しては多少なりとも「遠慮」があったようだが、中村光夫へは「絶対に返事をくれ」的な強引にも読める もの言いも。
川端が初めて読んで(北條から郵送されて)誉めた北條作品『間木老人』も収められている。

『寒風』は、死の報を受けて駆けつけた病院での出来事と亡き北條についての回想を記した作。

『いのちの初夜』(他の北條作品)はとっくに著作権が切れているので青空文庫にも↓。小一時間で読める分量。

図書カード:いのちの初夜


言わずもがなにして念のためですが 「初夜」は↓⒈の意味に非ず。

https://kotobank.jp/word/%E5%88%9D%E5%A4%9C-535192#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89