小説を読みながら「早く先を知りたい けど いつまでも終わらなければいいのに」と思うコトありませんか。本作もまさにそうでした。
一作ごとにテイストが異なるイシグロ世界。
このヒトこそ(「だけ」に非ず)小説家が天職じゃないかと思う。
走攻守三拍子揃いまくって楽しそうにプレーするイチローのイメージ。
むろん、イチローもイシグロも 努力の上に努力を重ねに重ねているであろうことは言うまでもなく。
ハヤカワepi文庫、2007年(原著1995年)、939ページの本作は
有名ピアニストの「わたし」に ヨーロッパのある町で話しかけてくる誰も彼もがクドクド喋り続け なかなか本題に入らない←カフカ『城』をちょっと思い出させる不条理調
起承転結の承が長〜く ときおり転が と思いきやまた承がエンエンと←この感じ マルケス『百年の孤独』のような。
承にコクとキレ、ドンドン読み進ませる。心地よく。
余韻が深い(そして、あと味の良さ!)イシグロ小説だが、けっして「難しく」はない。
本作でもたとえば始めの方で
「わたし」が観ているSF名作映画「2001年宇宙の旅」の宇宙飛行士役がクリント・イーストウッドとユル・ブリンナー
と書き(モチロン実際は出演してないわね)
虚実が混在していることを
親切に?示してくれたり。