行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

『あしたのジョー』

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小学生の頃おこづかいを『少年マガジン』だけに費やしていた。一冊60〜70円の時代。
ギャグの二本柱「天才バカボン」と「パットマンX」に毎週大笑いさせてもらったものだが、なんと言っても最大のお目当ては「巨人の星」だった。

あしたのジョー」もワクワクしながら読んでいたが、世のオトナたちがやたらと持ち上げるのが何となく気に食わず、力石の死のあと「巨人の星」最終回を見届けたタイミングでマガジンを買うこと自体をスッパリ止めてしまった(その原資で『月刊大相撲』を購読した^^;)。だけど、ちょっぴり気にはなっていた。

15年ほど前に出た復刻版で最後まで読んだ。凄かった。ストーリーのうねりもディテール一つ一つもちばてつやの画力も何もかもが。
白木葉子の愛を拒絶しながら受け入れた(または受け入れながら拒絶した)シーンは悲しく厳しく美しかった。
あまりにも有名なラストシーン「真っ白に〜」は中盤過ぎに小さな伏線があった。
そして、力石はジョーの中に「最後」まで「いた」。

とりわけ中のとりわけが金竜飛のくだり。金の東洋チャンピオンシップに挑戦したジョー朝鮮戦争時の凄絶な戦時体験を聞かされて気圧されていたが、KO寸前まで打ち込まれながらオノレのパラダイムシフトを獲得する。金のハングリー精神は他律的だが、ジョーと戦うための力石の減量苦は自律的だった と。猛反撃に転じ、金は自らの戦時体験「ゆえに」敗れ去った。
往年のフォークソング戦争を知らない子どもたち」は戦争体験を真摯に受け止めながらもその「オールマイティ」的なところへの些かの反発を(も)歌ったが、「超える」体験として何かを描いた例は他にあんまり無いのではないか。

モチロン戦争が人々にもたらす惨禍はまさに他律的だからでもあり、戦争が絶対に許されないのはだからこそでもあり(金のKO負けという「二次被害」をもたらすほどに戦争は罪深い)、他ならぬちばてつやも代表作の一つ『紫電改のタカ』ラストでそれを訴えている。

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