行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

映画「ブルックリン」レビュー

主人公エイリシュの、嬉しいときも悲しいときもまっすぐな眼差しが心に残る。

アイルランドの小さな町で1950年代前半、母親とは多少の確執がありながらも家族と平穏に暮らしていた内気ぎみのハイティーン娘エイリシュ。どんよりした「狭い世界」から脱しようと姉の後押しを受けニューヨークに渡り、デパートで働き始める。

当初はホームシックに襲われ悩み苦しむが、身元引受人的な神父の計らいで通い始めた大学の勉強にやりがいを見出したのと相まって仕事にも自信を深めていく。そして、地味だが人間味溢れるトニーと恋人同士に。

そんなとき、敬愛してやまない姉の訃報が届く。葬儀のため帰郷。たまたま親友の結婚式が近づいていて、しばらく滞在することになる。

姉急逝で悲嘆を、帰郷直前トニーと「まだ二人だけの秘密」で結婚したときは幸福感を、私は共有できた。起伏に富む右肩上がりストーリー。帰郷後、転調する。

町は変わらずどんよりしていた。が、まっすぐな目はそのままながらも、だんだん馴染んでゆく。最愛の人が待ち、学位を得て大チャンスが開けそうなブルックリンに戻るか否かが悩ましいほどの、「閉鎖社会」の引力。

老いた母を一人残すことになる葛藤と、(トニーと正反対に)経済的に安定していて教養のあるジムからの求婚。ここは、ありがちな「条件のよい男性があとから現れて」だけではない心の揺れをもっと描き込んでほしかった。「いなかの陰湿」を体現するようなバイト先店長もややステレオタイプか。渡米のときも帰米のときも店長への憤りが決心を促すと共に彼女の成長を端的に表すことになる、キーパーソンではあるが。

50年代前半アメリカにおけるアイルランド人のネガティブな状況が示される。61年1月のケネディ大統領登場はやはりとてつもない出来事だったのだろう、とふと思った。