8編から成る連作短編集です。2015年刊行。
ミステリーの古典たる チャンドラーの同名作とは全く関係ありません。(著者の直木賞作『小さいおうち』は 古典的絵本「ちいさいおうち」と関係大ありでしたが。)
主人公(と言うべきか)は、認知症がドンドン進行する東昇平。家族各々が抱える事情や思いを浮き彫りにする、言わば舞台回しも担っています。
最終8編目の最後に、ある属性を昇平と同じくする人物によってタイトルの意味が明らかになります。
著者を読むのは『小さいおうち』以来2作目です。長編と短編の違いゆえか 直木賞作の重厚感とはまたテイストが異なる味わい深さ。いい意味で読みやすい文章は共通です。
5編目ラストに秀逸なウイットが。
ケアは筆舌に尽くしがたいほど大変だが 昇平の「おかげ」で家族たちは自分を見つめ直す。だから、彼が「いる」意味はモチロンある。との読後感はマトはずれ的深読みでしょうか。
私も親が要介護です。