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行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

森健『小倉昌男 祈りと経営』

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私が新米営業マンだったときに担当していたヤマト運輸には、仕事はアグレッシブ、人柄は人間味溢れる社員がおおぜいた。同社の中興の祖として知られる小倉昌男氏が社長を務めていた時期である。本作を読んで、なるほど!小倉イズムでもあったんだなあと感じ入った。

宅急便という大発明を着想し 規制との闘いも交えて業として成し遂げた氏が、福祉事業に「転身」したのはなぜか。氏ならではの正義感か 博愛精神か はたまた敬虔なクリスチャンであった信仰ゆえか。それらももちろんであるが、きめ細かい取材によって著者は最大の「理由」に行き当たる。本作のキーであるその「理由」は、氏の心に深く刻まれていた苦悩でもあった。いくつかある氏の評伝では(自叙伝でも)触れられることがなかった、そこを丁寧に書き込んだからこそ等身大の氏を描き切れていると思う。

氏は句も詠んだ。
イタリア旅行でイエス像を見たときの
    守宮(ヤモリ)ゐてイエスの足の釘の跡
など センスを感じさせる句が作中でいくつも紹介されている。
    妻もまた同じ思ひの良夜かな
お互いがお互いを大切に思い合っている夫婦であった と周囲の人は皆が言う、と。

2015年小学館ノンフィクション大賞