2012年9月9日朝 ロンドン郊外で、高度760メートル上空を飛ぶ旅客機から、旅客ではないアフリカ人20代男性が墜落死した。彼はアフリカ南部のモザンビーク生れ。必死の思いから 文字通り「必死」の方法で飛行機に「乗った」青年の「その時」までを追ったルポルタージュ。
欧州諸国による植民地支配→独立に伴う内戦 の歴史に起因する、どう解いたらよいか分からない糸の固まりのような アフリカの「闇」が浮かびあがる。移民「問題」の温床でもある「闇」が。
今年5月発行。
一つのケースを掘り下げることで現代社会の問題を描く、と著者は狙いを述べる。それは成し得ていると思う。
ただし、取材難易度が高い題材とは思うが、ある一人の証言に分量的にも内容的にも多くを依っていることに私はやや ?を感じた。そのスイス生れ白人女性と対立する立場の人間には取材できていない(ことはもちろんフェアに明らかにされている)。
青年と同じ方法で飛行機に「乗った」例が100件ほど(アフリカ→欧州とは限らず)確認されているとのことなので、加えて一例でも二例でも取材すれば(これまた容易ではないだろうが)厚みが増したのでは とも思った。