行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

恩田陸『ユージニア』

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昭和40年代、日本三大庭園の一つがある地方都市で、帝銀事件に似ているが 帝銀事件より死亡者が多い毒殺事件が起こった。10年後20年後に11人が語る真相(あるいは「真相」)とは? 現場に残されたメモの、ユージニアなる言葉の意味は?
2006年日本推理作家協会賞の長編部門と連作短編集部門 ダブル受賞作。

「関係者が語る「真実」は食い違いもありながら真実に収斂していく」は定番的構成と言えるかもしれませんが、11人各々が語る章ごとに 各人の人生(≠ステレオタイプ)も浮き彫りになる完成度の高さ。(ナルホド長編賞にして連作短編賞!)
エラリー・クイーン『Yの悲劇』にちょっぴりだけ似ていますが オマージュと捉えこそすれケチをつけるようなタグイではありますまい。

ストーリーの巧みさばかりでなく、文章もイイ(その両面が 小説たる車の両輪と考えます)。
たとえば、単行本239ページ&文庫219ページ↓
重たげに夏は過ぎる。
枝豆の莢やとうもろこしの芯、西瓜の白い部分やアイスキャンデーの棒の数を増やし、出入りの酒屋がビールの空き瓶をがしゃんと鳴らす音を聞きながら、夏はのろのろと過ぎてゆく。
↑ホントに素敵な文章と思います。まさに「(昭和40年代の)夏」が描かれていて。その時代 こどもだった私は夏休み(の後半)の空気感がホントにこんなだったなあと。

文庫の巻末には通常の「解説」や「著者あとがき」ではなく、「ユージニアノート」と題して本書の造りに携わったブックデザイナーたちが語っています。表紙の写真は作品のイメージ、タイトルと著者名は同じサイズなのに著者名の方が大きく見える、単行本本文の「平衡感覚がちょっと麻痺する」書体等々 本作にふさわしく「頭がくらっとする」仕掛けを随所に施した、と。

ナゼ今まで恩田陸を読まなかったのか 自分!と言いたくなるほどの面白さでした。