行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

映画「大いなる沈黙へ」

アルプス山脈に建つカソリックの男子修道院。厳格な戒律で知られる。その一年間を「そのまま」撮ったドキュメンタリー。照明なし・音楽なし・ナレーションなしの条件で映画化が許可された(と文字説明が入った)。

祈り中心の(と言うより祈るための)質素で規則的な毎日。修道士たちがここで一生を送るのは、字幕として何度も出た「神よ あなたが私を誘惑した」ゆえだろうか。それは異性や仕事に「誘惑」(騙しとしての誘惑に非ず)されて没入するのと似て非なるものか、似ずして別物か。没入しきるほどの「魅力」と捉えるとしたら、まさに似たもののようにも感じた。俗世のあれこれとはそもそもが異なるのは言うまでもないが。

時おり修道士たちの顔アップが挟まる。いたずら小僧がそのまま大人になったような顔、どこにでもいそうな好々爺みたいな顔。皆、見るからに聖職者 みたいな趣ではなかった。日曜日に数時間だけ修道院の外に出て散歩が許される。一週間でそのときだけ言葉を交わすことが認められ、ジョークを飛ばし合ったり。無邪気に雪遊びをしたりも。   

意外にも、とりたてて禁欲的とは感じられなかった(もちろん禁欲に他ならないが)。祈りそのものだけでなく修道院生活全体が信仰の実践であり、かつそのことを意識さえしない境地にも達していて、ことさら自らに禁欲を課しているわけではないからだと思う。

静かで穏やかな暮らし。2時間49分。眠くなるが、だんだん「馴染んで」きて単調でゆったりした時間を見続けるのが心地よくもなってきた。複雑で慌ただしい日々よりも「あるべき」だからか(たまに旅行で山に行くと二日もすれば退屈するくせに何をか言わんやだが)。   

「人間が他の動物と最も異なるのは信仰心」と何かに書いてあったのを思い出した。その伝でいくと我々多くの日本人はどうであろうか。「日本の常識は世界の非常識」の一つと言えるかもしれない。異性や仕事に似ている なぞと言う私こそ「多くの日本人」の最たるものだろうか。

日本公開2014年

本作の公式サイト↓

映画『大いなる沈黙へ』オフィシャルサイト

 

キリスト教カソリック)に関して 近年観た2作↓

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