行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

小説「デフ・ヴォイス」シリーズ

f:id:miyashinkun:20190815215337j:plain

 丸山正樹氏による小説。『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』は2011年発行の長編(2015年に文庫化)、『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』は2018年発行で中編+長めの短編+短編を収録、『慟哭は聴こえない デフ・ヴォイス』は2019年発行で短編4作が収められています。どの順で読んでも大丈夫です。

 タイトルの「デフ・ヴォイス」には3つの意味↓を込めている、と丸山氏自身が自作の紹介で述べています。

 ①(文字通りに)「ろう者の声」

 ②ろう者にとっての言語である「手話」ということ

 ③(ろう者に限らず)言いたいことがあっても圧倒的な多数の前にあってその声が社会に届きにくい社会的少数者の声

 ミステリー仕立てです。主人公は両親と兄がろう者の家庭で育った、聴者荒井尚人。聞こえない親から生まれた聞こえる子をコーダ(Children of Deaf adults)と言い、荒井のその属性が全作にわたっての伏線にもなっています。手話通訳士を務めていて、様々な「事件」に直面します。刑事事件や民事事案ばかりでなく、ろう者の生活や仕事に関わる様々の。それらの「事件」を通して、ろうであるゆえの悩みと ろうであるがゆえの社会的バリアが浮き彫りになります。

 とりわけお薦めするのが、最新刊の『慟哭は~』。ストーリーテリングが実に滑らかで、①~③↑がテーマとしてギュッと凝縮されて描かれています。妊娠中の、芸能活動を始めた、会社勤めの、ホームレスの、普通学校に通う等々のろう者が4作の中に登場。1作目の表題作では、ある慟哭が誰に聴こえず、誰に聞こえなかったか。そのラストに胸が締め付けられる気がしました。

 3冊の全作に共通して、③↑と関連してろう者に限らずOOであるゆえの社会的バリアはあってはならない 少なくとも最小化されなければならないと深く考えさせられます。それはとりもなおさず著者自身に強い思いがあるからこそでしょう