戦後70年の昨年, 読んだ本 の検索結果:
2022年7月発行 日本語もすこぶる堪能な著者。 日韓両国語版のある前書『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』は「何よりも、韓国の人々に読んでほしいという気持ちが強かった」(本書「はじめに」)ので韓国で先に刊行されました。 本書は日本で先に出版。「まずは、日本の読者に読んでほしい」(「はじめに」)からです。 著者は本書で、慰安婦問題と元徴用工問題および両問題の根幹となっている1910年日韓併合と1965年日韓協定について緻密に歴史を辿り、丁寧に論考を進めました。 著者は こ…
かつての反戦系映画で旧日本軍(特に陸軍)の現場司令官クラスを演じるのはしばしば「粗暴な」「人相の悪い」悪役俳優でした。分かりやすすぎでは?と思ったものです。(逆に旧軍のあれこれを美化する作もまたあった。) 2000ゼロ年代の米国パウエル国務長官は「ハト派の軍人」とも言われました。その評が本当に氏に当てはまっていたかは別として、「軍人なのにハト派??」と少なからぬ日本人には分かりにくすぎるかもなあ とフト思ったものです。 今年7月に講談社から発行された本作で柱となる3人のヒロシ…
小池氏支持率57%、五輪対応評価割れる 朝日世論調査(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース どちらの政治的スタンスからも強い批判や非難に晒されているにしては支持率が高いように感じます。 とりわけ目につく人格批判の元になっている一つが、ベストセラーになった『女帝 小池百合子』。先月に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど世評が高いようですが、私の読後感は異なります↓ miyashinkun.hatenablog.com 近年の大宅壮一ノンフィクション賞↓↓↓↓↓ mi…
終戦後ソ連軍によってシベリア抑留を強いられた日本人約60万人の中に数百人の女性がいた。そのうち10人ほどに取材したノンフィクション。2019年12月発行。(彼女らは元看護師たちだが、本書では「看護師」ではなく最近までそうであった当時の呼称「看護婦」と表記。) タイトルからだけでは何について書かれているのか想像がつかない若い人も今や少なくないかもしれませんね。 私どもの親世代や祖父母世代たちが戦争で被った苦難を語り継ぐ、私より一世代二世代下の書き手たちに心から敬意を表します。 …
8時15分で止まった時計、中身のご飯が炭化した弁当箱、眼鏡、靴、帽子、ビー玉、、、あのとき広島の「ピカドン」で持ち主を失った14の「もの」たちが呟き、訴え、語りかける。↑鍵はなにを「さがして」いるのか。 岡倉禎志が「もの」たちの「表情」を撮り、アーサー・ビナードが「声」を文にした。2012年、童心社発行。 miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com miyas…
ドストエフスキー『罪と罰』や漱石『こころ』やカフカ『審判』 あるいは村上春樹やカズオ・イシグロではあったりまえすぎる?ので ほぼ読んだ順で、他の時期に読んでいたら入らないかも の私的で私的な10冊。 ①クイーン『Yの悲劇』中坊のとき初めて読んだ大人の推理小説(小学校図書室で読み倒したホームズ、ルパンの子供向けシリーズは番外)。ビギナーズラックで?後半なかばに犯人が分かった。以降、いわゆる本格ものを読んで犯人当てたことなし。②五木寛之『蒼ざめた馬を見よ』高一で読み、子供から若者…
いずれ「平成という時代」が終わった感慨を表した小説も。 夏目漱石『こころ』(大正3年刊行)では最終盤に「明治という時代」が終わった主人公の(そして漱石自身の?)感慨(それは深くかつ重い)が語られたが、「今日、昭和が終わった。」の一文で始まり、翌年すなわち平成2年2月までの日々が静かに綴られた高井有一『時の潮』(平成14年刊行)は小説全体が「昭和という時代」が終わった感慨になり得ている。主人公は(著者の高井有一も)昭和7年生まれ。所々で、彼と周囲の人々の昭和を生きてきた半生がこ…
筑摩書房のPR誌『ちくま』 3年前の今月、2014年11月号に 従軍慰安婦に関する保阪正康氏の論考が載っていました。 「業者が若い女性を騙して連れてきたケースは」「決して少なくなかったことは」「すぐにわかることだ。」 「軍隊と性について語るときに、幾つかの前提、あるいは基礎知識となる史実をあらかじめ知っておく必要がある。」「このような知識がないために」「まったく史実と反したり」「いきなり現在の人権問題とからませて論じたり」「粗忽な肯定、否定の論者がいる。」 と書き出して、まず…
一冊の本と一本の映画を改めて紹介します。 miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com 隣国では解放記念日であることにもまた眼を向けたいと思います。去年大ヒットした映画にもそんなシーンが↓ miyashinkun.hatenablog.com
一昨年の世論調査↓。一昨日の「ニュースウオッチ9」でも触れられていました。 www.nhk.or.jp たとえば↓、もっと読まれてほしい。 miyashinkun.hatenablog.com miyashinkun.hatenablog.com
上坂冬子『遺された妻 横浜裁判BC級戦犯秘録』中央公論社、1983年 A級戦犯7人が処刑された巣鴨プリズンでは BC級戦犯53人も処刑された。そのうち20人ほどの妻を ノンフィクション作家として知られる著者が訪ね歩いた。 併せて 執行を宣せされた処刑前日から処刑直前にかけて書かれた各人の遺書を収録。 著者は 何人かに 日本の再軍備 についてどう思うか尋ねている(発刊された年は中曽根内閣のころである)。 妻たちの答えは・・・
朴裕河『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』朝日新聞出版、2014年。 日本語書き下ろし版。(著者は日本で 大学を卒業し、大学院を修了している。) 大日本帝国による植民地化が(戦争が、に非ず)もたらした負の構造であった(「帝国の慰安婦」)という大前提の上で、 彼女たちを「連れて行った」業者(彼女たちの同胞もいた)の「罪」も等閑視してはならない、、、 「支援」者の「強制された少女」という「記憶」も 「否定」者の「自発的な売春婦」という「記憶」も(それに類するような例外はあった…
⑧半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』文春文庫 ※写真↑ 1965年の刊行時は「いろいろな事情から」「大宅壮一編」となっていたが、実際に書いたのは半藤氏だったとのこと(本書「あとがき」より)。 ふと妄想。米テレビドラマ、ジャックバウアー「24」の着想のヒントはコレだったのでは⁇? ⑨猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』1983年 1941年4月 官制の「総力戦研究所」が発足。各省庁等(含陸海軍)から30余人の30代俊英が出向して行われた対米戦のシュミレーションを 開戦に至る現実…
高井有一『この国の空』新潮社、1983年 二階堂ふみ主演 ハセヒロ共演で昨年公開された映画の原作小説です。 1945年の、8月14日までの、東京のある町(「隣組」体制の)。 空襲が「日常」である日々とは? 「銃後」の暮らしとは?、、、人々の「揺れ」。 主人公は少女から大人(または「大人」)への「揺れ」にも直面している。 1945年のアレコレはいろんなカタチで語られますが 市井の人々の心の機微を、それは平時とどう違うか(違わないか)を、深く掘り下げるのはまさに小説の「仕事」(中…
歴史探検隊『50年目の「日本陸軍」入門』文春文庫、1991年 カタイものもヤワラカイものも手当たり次第的に読みます。 硬軟にかかわらず たいていの本には少なくとも数10ページに1行は !や♬が。こんな高確率 他のコトではあんまりないでしょうな。 書誌情報をキチンと付けた参考文献リストを巻末に載せることもない(もちろん全体に根拠は示されていますが)、 やわらかアプローチですが 兵士たちの日常をディテールのディテールまで「探検」、「皇軍」の愚かしさと非人間性を余すところなく伝えて…
清水正義『東京裁判論争をめぐる50問50答 戦争責任とは何か』かもがわ出版、2008年 「50問50答」と言っても トリセツ「よくある質問」的な知りたいコトだけ見れば、のシロモノではありませぬ。 1ページ目から通して読むべき 一問一答仕立ての論考です。 著者の清水教授はドイツ現代史専攻だけに 両大戦後のドイツ「戦後処理」に関して多くの紙数を割きつつ 東京裁判、靖国、教科書等々をめぐる問題を論じながら 戦争責任とは何か、戦後補償とは何か を223ページにわたって考察しています。…
高橋弘希『指の骨』新潮社、2015年 大戦末期、南太平洋の島の野戦病院。 「私」たち重傷者の無為で無為な日々。そして マラリヤで次々と命を落とす。 21歳の「私」と親しかった同年代の者たちは 皆、戦闘で 野戦病院で、死んだ。 ある日突然、敗走が始まる。凄惨 という言葉ではあまりに軽すぎるほどの、、、 昨年1月に発表された芥川賞の 候補作。 ワタシ的には受賞作(『九年前の祈り』)よりこちらに一票かな。 声高に反戦を訴えるのではない、優れた反戦小説たり得ていると思いました。
深谷敏雄『日本国最後の帰還兵深谷義治とその家族』集英社、2014年 1915年生れの深谷義治さんとその家族が 「戦争」ゆえに辿ってきた凄絶な年月を 義治さんの次男 敏雄さんが 父の視点と息子の視点 両方向から再現。 大陸で中国人を装って陸軍の諜報活動に従事していた義治さんは 1945年8月15日以降も「上官の命令」により活動を続けた。 その科により58年 中国当局に逮捕され、虐待レベルの処遇(含拷問)で獄中20年間。78年に特赦され家族共々日本に帰還した。 無条件降伏後の「活…
山田風太郎『戦中派不戦日記』 元旦「日本の存亡この一年にかかる。」「祖国のために生き、祖国のために死なんのみ。」大晦日「日本は亡国として存在す。われもまたほとんど虚脱せる魂を抱きたるまま」「いまだすべてを信ぜず。」 東京の医大(≒軍医養成)学生だった著者が1945年(昭和20年)ほぼ毎日、見たモノ聞いたモノ思ったコト考えたコトを克明に記した。ほぼ毎日、の例外の一つが8月15日、、、記述はわずかに「帝国ツイニ敵ニ屈ス。」のみ。その日の事々は翌日になって連ねている。 連日の空襲警…
平和記念公園内 左下が原爆供養塔(別名「土饅頭」) 右上は原爆ドーム 堀川惠子『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』文藝春秋、2015年。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。 おすすめ と 特おすすめ があるとすれば、断然 後者です。戦後70年の5月に刊行されたノンフィクション。必読とまで言い切りたい。 広島市平和記念公園の片隅にある原爆供養塔を「守って」きた老婦人(自身も いわゆる入市被曝。20人以上の親族を失う)を軸に、塔にねむる 「氏名」が簿に記された多くの遺骨と…