エリ・H・ラディンガー著(シドラ房子訳) 築地書館 2019年発行(原著は2017年)
著者は、主に北米で20年間以上 野生オオカミを観察してきたドイツ人女性。原題は「die weisheit der wolfe」(オオカミの知恵)。表紙写真で黒毛皮が灰色毛皮の頭を咥えているのは親愛の情の発露としてのじゃれ合いだが、本書では「遊び」ばかりでなくオオカミの営み全般が記録されている。
群れでの暮らしをとても重んじるオオカミは、高齢や負傷のため体力が弱ったメンバーに食べ物を持ってくる。小さい子以外に対しても世話をする唯一の動物だという(人間以外では)。
もちろん、「美しい」シーンばかりではない。食い裂かれた餌動物、血や砕かれた骨。ライオンやトラのように一噛で絶命させる噛力はないので餌動物が「苦しむ」時間も長い。そして、そうした噛力のほか体重50キロ程度と小さめ、走るスピードもさほどではなく、個々の体格や運動能力には恵まれないので捕食に群れのチームワークが不可欠である。
著者は、大昔からの人間とオオカミとの関わりであるとか 「オオカミの知恵は現代のヒトの生活にも役立つ」(表紙に記載)といったことも強調。それらは必ずしも全面的に首肯できないかもしれないが、とりわけ興味深かった仮説は・・・
イヌの祖先はオオカミとされるが、その最初期。人間に慣れさせるためには赤ちゃんのときに人間の手で育てる必要があり、ミルクは人間自身の母乳を与えたに違いない。牛や山羊の家畜化はそれよりずっと後の時代だから、と。
オオカミだけでなく哺乳動物が感情を持つことは今や定説のもよう↓↓↓
それにしても「なぜ〜のか」なるキャッチーなタイトルは今だ流行りのようだけど、↓は「ポッキー、フランス人」のくだり僅か3ページ弱。