ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

ユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessonsー21世紀の人類のための21の思考』

2010年代のベストセラー『サピエンス全史ー文明の構造と人類の幸福』『ホモ・デウスーテクノロジーとサピエンスの未来』を著した気鋭の歴史学者による新作『21 Lessons〜』(2019年11月 河出書房新社発行、原著は2018年)を読みました。
人類社会について前2作がそれぞれ過去の考察と未来の予測であるのに対して本作では現状が分析されたと新刊案内等で紹介されていますが、著者の意図する本作の主眼は現状分析を踏まえた未来(主に近未来)予測と言えましょう。もちろん現状分析をするために過去の考察も欠かせません。
したがって前作の既視感が少なからずあり、原著が2014年と2016年である前作後に得られた知見を加えたアップデート版という位置づけもできそうです。前作はどちらも上下2冊でしたが、本作は1冊だけ。ご用とお急ぎの向きは本作だけ読むのもありだと思います。それは内容が薄いという意味では決してなく、著者一流のエキサイティングな議論は本作でも揺るぎがありません。
前作との大きな違いは、1976年生れでイスラエルで生まれ育ったという属性に伴う思考と心の揺れが随所で明かされていることです(宗教的・社会的な禁圧が強い性的指向を有することも含めて)。それは、考察に角度と深みをいっそう加えています。
以上の理由からお薦めいたします。