行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

「悪い」と「良くなっている」は両立する

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   『ファクトフルネス 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』を読みました。日経BP社2019年発行(原著は2018年)。

   「悪い」と「良くなっている」は両立する、と本書は説きます。「悪い」は現在の状態、「良くなっている」は変化の方向を表します。1948年スウェーデン生まれの著者ハンス・ロスリング氏は医師として、経済発展と農業と貧困と健康のつながりについての研究者として、国際援助機関のアドバイザーとして世界の貧困地域の「悪い」が少しづつでも「良くなる」よう尽力してきました。

   「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
   A約2倍になった Bあまり変わっていない C半分になった」
これは、本書の冒頭で出された13問のクイズのうちの一つです。AあるいはBと答えがちではないでしょうか。正解はC。すなわち29%から2017年には9%に下がっています。9%と言えども人口数では何億人にもなり、もちろんそれは「悪い」現状です。しかし、おおぜいの様々な取り組みにより「良くなっている」のも事実なのです。

   クイズは他に「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう? A20% B40% C60%」「自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう? A2倍以上になった Bあまり変わっていない C半分以下になった」「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう? A20% B50% C80%」 「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう? A20% B50% C80%」等。どれも世界各国でアンケートを取ると一般の人もいろいろな分野の有識者も正解率は非常に低いとのことですが、正解はいずれもC。データに基づいて著者はそれを証明します。

   こうした「世界はどんどん悪くなっている」の他に「ひとつの例がすべてに当てはまる」「誰かを責めれば物事は解決する」「いますぐ手を打たないと大変なことになる」等10の思い込みを 本書を読むと「乗り越え」ることができます。

   著者は、事実に基づいて世界を見ることすなわち「ファクトフルネス」を提唱します。事実は、正確なデータを真正面から見ることで分かります。著者自身がファクトフルネスでなかったゆえに取り返しのつかない失敗をした経験も明かされます。もちろん、ファクトフルネスによって「状況は思ったほど悪くない」と油断するのではなくもっともっと「良くなる」よう小さな一歩を重ねることが肝要なのです。

   「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込みを乗り越える章で「子供にトンカチを持たせると、なんでもくぎに見える」という諺を引用するなど、全体にわたってユーモアに溢れていました。

   疑問なのは、日本を含めた国々で顕在化している高齢化への問題意識が希薄なこと。と思ったことこそ読み終えた私がファクトフルネスを身につけた証かもしれません。それは鵜呑みにするなという意味にもなるのですから。

   ハンスを中心に二人の子オーラとアンナとの共著です。父ハンスは出版前の2017年に癌で逝去しました。