津村記久子著2020年発刊短編集の表題作「サキの忘れ物」。18歳太田千春は高校を中退して喫茶店で働いている。あるとき、毎日のようにやって来る「母親よりは年寄りで、祖母よりは若く見えた」女の人が本を置き忘れた。表紙の写真は「鼻が高くてとがった、二重まぶたの、おでこの広い物静かそうな男の人だった」。それまで読み通した本は一冊もなかった彼女だが、「サキの本」が「どうしても気になって」購入した。その『サキ短編集』(を置き忘れた女の人)との出会いがきっかけになり、10年後、10年前には想像もできなかった職に就いている。とっても後味のよい作。