充実の本展は各方面で既に様々取り上げられていますので、ちょいと角度を変えて・・・
紀元後79年のヴェスヴィオ山噴火による火山灰に覆われて、ローマ帝国の都市ポンペイ社会のありのままが残されました。
発掘品の中で、時間軸も空間軸も異なる現代日本と①そっくりそのまま相通じる(驚くべきことに) ②相通じるが中身が異なる ③まるっきり異なる を少々ご紹介します。
①壁職人の曲尺とコンパス。(壁はポンペイ文化の重要な構成要素でもあります。)
外壁(それこそ壁)に掘られた賃貸物件の広告。
②楽器。振って鳴らすとのことですが、私たち現代人の耳には美しい音色は聴こえそうにありませんね。
古代発掘品の楽器を見るたび、音楽に親しむのは人間の根源的な事なんだなといつも思わせられます。しかし、、、以前に聴く機会があった奈良時代の楽器の復元演奏は「雅び」とは程遠いくすんだ音にしか聞こえませんでした。
③古代や中世ヨーロッパにおける文字通りの裸体全身像は展覧会でよく見ますが(本展にもありました)、この造形は頭部とX部だけ。
そもそも「常識」がまるっきり違うわけで、もしも現代の観点そのままに私たちが「この作品の芸術的含意は?」と古代のポンペイ人に問うたとすれば「ちょっと何言ってるか分からない」てなところでしょう。
全て撮影OKだった約150点のなかで4点だけを選んだうちの1つが是れだと我が品性が疑われるかもしれないなあと躊躇しましたが、これをもって品性がどうのと心配するところがまさに現代人の「常識」。ポンペイ人はそこのところ真逆だったのでしょう。
②に関連して、16世紀に来日したヨーロッパ人の感想「われわれの間の種々の音響の音楽は音色がよく快感を与える。日本のは単調な響で喧しく鳴りひびき、ただ戦慄を与えるばかりである」↓