『毎日新聞』海外支局の記者による7カ国のリポートを収録。少子化は世界的課題ですが、国によって様相が異なることが分かります。
2021年の合計特殊出生率が0.81と日本の1.30を大きく下回る韓国。その背景には日本以上かもしれない「若者の生きづらさ」があります。
中国には長らく続いていた一人っ子政策の「後遺症」が。
「2000年近い苦難の歴史」を経て自分たちの国を持ったが敵対国に囲まれているイスラエル、出生率低下にEU諸国等への移民増が加わるハンガリーには、少子化が「国家存亡」に関わるという切実な事情もあります。
米国からの報告は、究極の(あくまでも現時点で。今後とも「技術進歩」は止まらないであろう)少子化対策とも言えそうな卵子凍結の(高所得層への)普及をクローズアップ。
フランスとフィンランドからは、少子化対策をめぐって「国力の維持向上」か? 一人一人の幸せか? が問いかけられます(本書の副題にも関わります)。
これら7カ国の中でイスラエルだけは合計特殊出生率3.0レベルを維持。下がり幅が小さいフランスを含めて6カ国は2.0を下回りながら低下傾向です。
日本の課題への言及を含む、様々な立場の識者13人へのインタビューも付されています。少子化について考えるにあたって読むべき一冊。今年4月発行。
私は冒頭で「少子化は世界的課題」と書きましたが、実のところ文字通りの「世界的」ではありません。本書でも少し触れられていますが、アフリカ中南米アジア等に「人口爆発」が課題の国がまだまだあることは決して等閑視できないと思います。