ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか』

 

 落合博満氏が中日ドラゴンズ監督であった8年間にわたって番記者だった著者が、氏の内面によくぞここまで!肉薄した人物評伝。鈴木忠平著、文藝春秋社、2021年発行。

 

 現役時代の自身がそうであったように、氏は選手たちに技術をとことん磨き抜くよう求めました。「心は技術で補える。心が弱いのは、技術が足りないからだ」「ホームランは力で打つもんじゃない。技術で運ぶもんだ」などと。

 

 その他、日本シリーズ完全試合目前の投手交代を初めとする大ニュースな出来事や、中心打者が「チームバッティング」をしたら叱った等々、氏の代名詞と言える「オレ流」があまた書き込まれていますが、キリがなくなるので割愛します。

 

 本作を読み終えて、掘り下げて欲しかったなあと思った件が二つあります。

 

 一つは、落合氏世代のスポーツマンには珍しいであろう体罰断固否定派であること。当時テレビのインタビューで氏が「私は選手に決して手を上げません」と述べているのを聞いたことがあります。
 ところが本作では、監督就任直後に「絶対に選手を殴るな」とコーチ陣に申し渡した事実等を記すだけにとどまっています。

氏の言が、彼が就任する3年前まで中日で長期政権にあった監督を意識しているのは明らかでしょう。その亡き野球人は「鉄拳制裁」が知られているにもかかわらず人気が高かったことに暴力ダイッキライな私はなんだかなあと思っていました。私とて、故人が魅力溢れる人物であったことは十二分に認めますが(その魅力は落合氏が持ち併せていない種類と言えるでしょう)。

 

 もう一つは、2004年シーズン中の全球団選手会によるストライキ。落合氏は(監督という立場でありながら)「やらなければならない時にやらなければならない事がある」と選手にシンパシーを表したと伝えられていますが、本作ではこの件が全く触れられていません。

 

 この二件に関しても、本作で随所に示されている著者の深い洞察がぜひ読みたかったなあ。

 

 本作は野球の話オンパレード(当然ながら)。野球に関心のない方が極めて興味深い人となりを知るためには、映画(に止まらず ありとあらゆること)について氏が語り倒した↓のほうがよいかもしれません。

miyashinkun.hatenablog.com