ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

亡き西村賢太 正真正銘のラスト新刊!?

人物はありし日の著者

 

 この2月に急逝した西村賢太氏。5月30日に未完の小説『雨滴は続く』が刊行されましたが、6月25日に書評集『誰もいない文学館』(本の雑誌社)が刊行されました。再刊や文庫化を除く新刊としては氏最後の出版になるかもしれません。

 本作には2015年から2018年までの二誌での連載が収められました。初っぱな「世間的には些かマイナーな名が連ねられる」「極めての個人的な偏愛書録」なので「何ら人様に対して″オススメ″する意味合いを含むものではない。その点は、題名においてハッキリ提示したつもり」と氏による書評集ならそうこなくっちゃ!の宣言。

 取り上げられているのは主に大正~昭和中期の私小説西村賢太と言えばモチロン!の藤澤清造根津権現裏』から始まる25人ほどは「宣言」通りほとんどが今では名も知られぬ小説家ばかりです。

 一人一作につき4~5ページで、作者の人となりと作品の中身がコンパクトに紹介されています。西村氏が著わしてきた小説やエッセイとは一味違う達意の文章。併せて、氏の思いが綴られています。それは時に作者作品を離れ、待ってました!の毒も所々に。

 「私のような五流の書き手のところにも」今や各出版社から毎月10誌寄贈される文芸誌を「自作の所蔵号以外は封も開けぬまま、すぐと処分している」一方で、氏が小説を書き始める以前の時期に作成した「田中英光研究」なるタイプ印刷の小冊子を寄贈したある小説家からハガキ礼状が届いた感激を今も忘れず「未知のかたから同人誌や自費出版本を寄贈された折には必ず礼状を差し上げるようにしている」。このあたりがまた西村賢太ファンにはたまりません。

 氏の文章もう読めないんだなあと改めて寂しい気持ちになりました。

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