ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

全盲ろうの大学教授 福島智氏『ぼくの命は言葉とともにある』

 目が不自由な上に耳も不自由な人のことを「盲ろう者」と呼び、その見え方や聞こえ方の程度によって(1全盲ろう(2弱視ろう(3全盲難聴(4弱視難聴に大別されます(全国盲ろう者協会ホームページ)。

 福島智氏は(1)にあたります。

 

 氏を描いた映画「桜色の風が咲く」が昨年11月に公開されました。私はまだ観ていませんが、2015年に致知出版社から発行された氏の著書を読みました。

 

十八歳で視力、聴力を失うという経験をした私は、普通の人とは一味違った喜びや悲しみを感じてきたかもしれません。そんな目の見えない私が見てきた人生の風景、耳が聞こえない私が感じ取ってきた心のメロディー、そして、点字指点字で読み取ってきた命と魂に響く言葉を、本書でじっくりとお話ししたいと思います。(28ページ)

とプロローグで語り始める本書には、それこそ読者の魂に響く氏自身の言葉が数多ありました。

 

 人間にとってコミュニケーションがなにより大切であると氏は繰り返し強調します。盲ろう者だからこそそれが分かる、と。

コミュニケーションが困難な状況を三十数年間生きてきています。それによってコミュニケーションこそが人間を支えているということを身をもって体験してきました。私はコミュニケーションによって生き返ったと言っていいと思います。(86ページ)

 

 「生きる力と勇気の多くを、読書が与えてくれた」と題して、全6章のうち一つの章で氏が読んだ本について綴っています。

 氏が大ファンである小松左京氏と面談した時のやり取り
「ええ、目が見えず、耳が聞こえないっていう盲ろうの状態自体が、言わば、〝SF的世界ですからね。でも、いったんそう考えてしまうと、何だか楽しくて、明るい気分になってきますし、不思議に生きる勇気や力が湧いてくるんです。どんな状況におかれても、SFのように、きっと何か新しい可能性が見つかるはずだっていうふうに…。小松先生の作品には、人類の文明や社会のあり方を問い直すというテーマと同時に、圧倒的な逆境に立ち向かう人間の姿の素晴らしさ、そして、人の人生や幸福というものの意味を考えさせられるモチーフが裏にあると感じました。(以下略)
「僕は、こういうふうに僕の作品を読んでくれている人が、たった一人でもいた、とわかっただけで、これまでSFを書いてきた甲斐があったよ僕は
その後は、涙もろい小松さんは泣いておられるようすでした。(150ページ)
 私の心に残るくだりです。

 

指点字点字タイプライターのキーの代わりに盲ろう者の指を直接たたく方法。氏の母が考えつきました。