千恵子がいつも入る近所のドラッグストアには
「商品の箱や洗剤がまじったような乾いた匂い」
がする(本書5ページ)。
たしかに ドラッグストアってそんな「匂い」だよなあ。
小説を読んでいると ハッとさせられる言葉や表現に出会うコトがしばしばあり、それだけでも 読んでよかったと思える。
映画監督として知られる(らしい)著者の連作短編集。小学生の交通事故死に直接かかわる3人と間接的にかかわる2人が一話ずつ 心のヒダを一人称で語る。
正直、出来にバラつきがあるように感じた。特に1話目は マスコミに勤めるアラサーの不倫、という「いかにも」以上のモノはあんまり感じなかった。だが、繊維メーカーに勤める青年の5話目はとりわけ奥深く、初っ端の「いかにも」感は その伏線だったかとも思えてくる。
それにしても、ナゼこの本を読もうと思ったのかをどうしても思い出せない。(不勉強にして)映画監督としても小説家としても全く知らなかったし。
2016年1月刊行。