2018年にEテレで放送された「静かで、にぎやかな世界」の長嶋愛ディレクターによる「制作日誌」です。
番組名は、その学校内は音声は「静か」だけど子どもたちの手話が「にぎやか」、ということを表しています。取り上げられた明晴学園は手話を「第一言語」とする学校です。
本書では番組内容をトレースしつつ、どのように作り上げたかが記されます。併せて、自身は難聴である長嶋ディレクターが聴者ばかりの職場で日ごろ何を考え、どのように働いているか、そんな彼女が「明晴学園」とどう向き合ったか、思いが綴られます。
昭和の時代、ろうの子どもたちは音声言語の「獲得」を求められました。耳から情報を入れられずしてどう「獲得」するのか私たち聴者には想像もつきませんが、にもかかわらず「獲得」するためには想像を絶するような厳しいトレーニングを要するのであろうことは想像できます。
そうした状況に問題意識を持った人々によって学園の前身がつくられました。
この本では、「聞こえるようになる魔法の薬があったら飲みますか?」との問いに対する生徒たちの返事は?等々印象的だったり考えさせられたりのくだりがいくつもあります。軽いタッチでの200ページほど、短い時間で読み切れますので宜しければご一読ください。
私は一昨年から「日本手話」と「日本語対応手話」を同時並行的に少しづつ習っています。明晴学園での言語は前者のほうです。両手話の違いについては本書を含めていろいろな書物で説明されていますが、習いたての私にはまだ今ひとつ腑に落ちない所がある(双方先生の指導が必ずしも「違い」通りではないように思われる)ので、ここで自分の言葉で説明するのは控えます。
口の動きが「文法」の一つであるのは両手話共通です。なので、習っている教室でどちらもコロナ対策としてはマウスガードを使っています。
「ろうの世界」を深く知るために↓