ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

冷戦史上最大の二重スパイ

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 東西両陣営の冷戦真っ只中だった1970〜80年代、オレーク・ゴルジエフスキーはソ連KGBの幹部スパイでありながら英国MI6にKGBの機密を提供し続けた。すなわち二重スパイであったが、1985年に至りKGBは強い疑念を持つ。厳しい監視下に置かれた彼はMI6とモスクワから西側への脱出作戦を試みる。その計画はあまりにもタイトなタイトロープだったが、その成否は?・・・を描いた臨場感たっぷりのノンフィクションです。

 KGB、MI6(「007」シリーズで知られていますね)、米国CIA等その時代の各国スパイたちによる様々な諜報活動とそれに伴う政治の暗闘が克明に再現されています。二重スパイも、ゴルジエフスキー以外にも何人もいました(もちろんゴルジエフスキーとは逆ルートも)。

 二重スパイたちの動機はたいてい物欲や色欲でしたが、ゴルジエフスキーの場合はソ連の体制が間違っているという強い思い。たけど「正しい裏切り」にせよ裏切りには違いありません。「国を売る」に至る葛藤の書き込みがやや足りないようにも思えますが、全体主義の内部で深くコミットするほど彼のような教養と信念を持つ人間ならなおのこと体制が正されなければならないと考えるのが当然または必然なのだと私は読み取りました。

 ゴルジエフスキーを初めとして各国スパイたちやゴルジエフスキーの家族の写真が巻頭に70点ほど載っています。彼ら彼女らの言動や心象を読んで、その佇まい(ある二重スパイの「末路」もあります)を見ると感じ入るものがあります。現代史に名を残すサッチャー首相とゴルバチョフ書記長のツーショット写真もありました。二人の係わりは?

 著者は英国人。ナルホド、所々にウイットが。そして「(女王は、サッチャー首相の)中流階級のアクセントを『一九五〇年ころからのロイヤル・シェイクスピア劇団の容認発音』だと言って、あざけっていた」といった毒舌も。

 『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』。ベン・マッキンタイア―著、小林朋則訳。2020年発行、原著は2018年。

 

「東」で育ったメルケル首相の言↓

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