行政書士ミヤシンの800字映画評

映画の感想を原稿用紙1〜2枚分でコンパクトに。ときどき書評。たまに・・・。

2015年芥川賞 又吉直樹『火花』

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若手漫才コンビの「僕」が語り手。別のコンビの4歳年上「神谷さん」との交流を軸に。
漫才師は日常全てが漫才の一部であるべき、が持論の神谷さんと
世間の規範からハミ出し切れない僕。
赤ちゃんをあやすとき
常識通りに「いないいないばあ」をする僕に対して
通じるはずもないオモシロ川柳を言い続ける神谷さん。
僕のコンビはそこそこ売れ始めるが
アブない芸風の神谷さんは世間から全く受け入れられず、本人もそれを全く意に介さない(こともない)、、、

 

とっても読み応えがあると思いました。

小説としての完成度みたいなものは高いとは言えないと思いますが、ソコは新人賞なので(批判的なムキが「ただの新人賞に騒ぎ過ぎ」を含意しているのなら それには同意できます)。

そないなコトよりなにより本作が心に響くのは

オノレの思い

笑いとは? 仕事とは? 「売れる」とは? そして、人生とは?

一切ガッサイ伏せることなく薄〜い紙一枚すら覆うことなく書き切っているから。

本作がシロウトっぽいとの見立てがあるようですが、薄〜い紙一枚を破り捨ててモノしたヒトはオノレの全存在を賭けた紛うことなき「プロ」でありましょう。

そのためにはまずオノレと真正面から向き合わなければならず(これまたムズカシイ)、言うまでもなく伝えるに十分な表現力も不可欠。

モチロン「思い」そのものがユニークでなければ読み応えなどあろうハズもありませんが、薄〜い紙一枚抜きならその必要条件は満たしているかと。

その上で(小さからぬ)プラスアルファーがあれば衆目が認める名作となるのだと思います。ソコは次作以降に大いに期待♬


<「神谷」の「ある手術」について>
「神谷」の終盤「暴発」は本作のキモ(彼の「暴発」は「必然」)であって 「ある手術」以上(以下と言うべきか)の「暴発」はなかなかないかな、と思います。
又吉はもっと穏当な「暴発」も考えたことでしょう(たぶん)が、又吉の分身でもあろう「僕」がキツく糾した通り最もベラボウにして明らかに「間違い」である「暴発」を選んだ
のだと思いました。

平成27年上期第153回芥川賞受賞 又吉直樹『火花』