飯嶋和一著『雷電本紀』(1994年発行の文庫化)
史上最強力士は江戸時代の雷電 が私ども相撲好きでは「常識」ですが、本作は史実とフィクションを交えた小説仕立ての雷電の伝記です。その時代は1800年前後。
素晴らしいのが相撲の取組の描写です。読んでいて手に汗握るほど、迫真にして厳密。相撲は決して力任せではなく、まことに理に適った体の動きであることも理解できます。好角家の間で語り継がれてきた名力士、四代横綱谷風や五代横綱小野川も登場。
本作を読んで、超強い上に正義感に溢れ情に厚く教養がある雷電、すっかり私の贔屓力士になりました(時空を超えて^^;) 赤いマワシを締めていたとのこと。
もっとも、文庫本500ページ弱の本作で相撲がらみのシーンは少なく、雷電が出てこないシーンも多いです。江戸の町人や雷電の故郷・信州の農民の視点から当時の社会が活写され、雷電を舞台回しとする歴史小説とも言えそう。