『死 Death in Nature 宮崎学写真集』、写真と文は宮崎学、1994年発行。
宮崎学氏は先日のEテレ「日曜美術館」でも紹介されていた写真家です。
亜高山帯(山地帯と高山帯との間)の森。
9月なかば、一匹のニホンカモシカが死んでいた。死臭(腐敗臭)が「死を自然界に知らせるサイン」となり、まず昆虫がとりつく。一週間ほど経ってからはタヌキが貪り食べる。
約一か月で白骨化。残った体毛をモモンガが巣に使うため持ち帰った。
冬の日本アルプス。
1月半ばすぎ、雪の表面にシカの死体が僅かに見えている。この季節には昆虫はいないが、かすかに死臭が漂うのか肉食獣が「偵察」に来た足跡が雪の上に残っている。
三週間ほど経ち、まず食らいついたのはタヌキ。そのあとテンやキツネやカケスも来て、2月下旬にはほぼ食べ尽くされた。
やがて雪解けし、5月になるとタヌキが骨髄を欲したのか骨も消えていた。体毛の大部分は鳥の巣材となり、残りはバクテリアが分解。
8月、シカの死体があった痕跡はもう見当たらない。
といった自然界の営みが写真に収められた本書を文章ではとてもレビューしきれません。
生きとし生きるものが「土に還る」とは?を深く考えさせられます。「生きとし生けるもの」の一員である私たち人間は?ということも。