『タマ、帰っておいで』、絵と文 横尾忠則、講談社、2020年発行。
15年間ひとつ屋根の下で暮らしたタマが2014年5月31日に息を引き取ります。横尾は数時間後に亡骸を描き、そして4日後から6年間にわたって生前のいろいろな様子を思い出しながらタマの肖像画を何枚も描いていきます。
その90点余りを収録。春には裏庭の桜のカーペットを歩き、冬には窓から雪景色を眺める。開いた抽出しの中で眠るのが大好き。積み重ねた本に座り、便器の蓋の上で身を横たえる。もちろん、愛おしむ横尾とのツーショットも。
生前についてはタマのかけがえのないエピソード、死後はタマを偲ぶ心情を綴った短文が、所々に添えられています。
「タマでーす」で始まり「裏庭のタマ霊園に眠るタマより」で終わる巻末のエッセイ「タダノリ君へ」もまた出色。誰よりも主観を前面に押し出しに押し出した創作者とも言えるであろう横尾が、これほどに己を客観視しているとは!(タマの目を通して(笑))
開催中の展覧会↓でも「タマへのレクイエム」と題するコーナーで本書収録作に新作を加えて展示されています。