ハカセこと福岡伸一氏が2020年3月4日から8日までガラパゴス諸島を回りながら陸で海で考えた一冊です。
各大陸が何億年も前から成立していたのと比べて、大小さまざま100以上の島からなるガラパゴス諸島は数百万年前〜数十万年前の海底火山隆起による地球史的には極めて新しい環境。進化は始まったばかりであり、日本の携帯電話のように独自進化した結果として世界から取り残されたということを「ガラパゴス化」と言うのは正しくない、と著者は説きます。
ガラパゴスゾウガメやウミイグアナやガラパゴスリクイグアナといった固有種を初めとする動植物の生態を文章とフォトグラファー阿部雄介氏のカラー写真でたっぷりと。
諸島の地学的成り立ちおよび、大陸から1000キロも離れている上に長いあいだ溶岩に覆われているだけだった(そうした場所は現在もある)諸島にいかにして動植物が定着したのか・・・定説と推論を詳述。とりわけ陸上動物はどうやって? 「天然のいかだ仮説」が紹介されていますが、まだまだ謎です。
そういった生物学者としての専門的観察・考察と共に、 「ひ弱なナチュラリスト」と自虐する(「トイレの苦労」等々でそれを痛感)観点を含めて地球における人間とは何か?に深く考えを巡らせます。ガラパゴス「発見」から領有や「利用」をめぐる欧米とエクアドルの史実、今回の船「マーベル号」のガラパゴス住民を含むエクアドル人スタッフたちへのハカセならではの温かい人間観察が、それに膨らみを加えています。
200年近く前のダーウィンの航路をほぼ辿り、偉人の学説も批判を交えて辿りました。