ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

河合隼雄『大人の友情』

 オノレを振り返ると、一生モノと思っていた10代からの友とアラフィフから疎遠になっちゃったり、アラフィフからの偶発的な友と昵懇になったり。いろいろです。やっぱり我ら人間はナマモノだから!?

 直球タイトル『大人の友情』。著者は言わずもがな、広く知られた臨床心理学者の河合隼雄氏(2007年没)。2005年発行の文庫化です

 日本には「あの人は虫が好かない」や「あいつとは馬が合う」という言いようがあるが キリスト教文化圏では人間の感情を表現するのに他の生き物を主語にすることはまずないだろう、といったあたりから考察が進みます。

 著者自身の診察例から古今東西の文献や研究までを踏まえた論述は多岐にわたっていますが、絞りに絞って二つだけ引用します。

・友情が強まると生まれがちな「一心同体」を求める心情は、二人の人間が文字通り「同体」になれるはずはないので危険性を孕んでいる。強烈な同一視を打ち破るためにはどうしても「裏切り」しかないような状態になる、その「人間というものの在り方の悲しみ」。

・友情の理想形はあくまでも「友情の行くえを照らす星」であり、「友情の到達目標」に据えるべきでは決してない。

 全体にわたって氏ならではのユーモアが散りばめられ、深い議論をノーストレスで読み通せます。

 最後にで紹介した「虫」と「馬」の続き。「虫」「馬」イコール無意識と捉えてみたら?と氏は問いかけています。「好かない」や「合う」はどんな無意識によってなのかを自分に問いかけてみる、ということですね。なるほど目からウロコ!