ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

一昨年のきょう凶弾に斃れた中村哲氏『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』

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中村哲著『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』NHK出版、2013年発行


 内戦や他国からの干渉よりも、もっと農業国アフガニスタンの人々を苦しめたのは度重なる旱魃であった。農民たちは難民化流民化せざるをなくなり、いきおい健康も損なわれる。医師である氏が医療活動以上に灌漑工事に尽力するようになったゆえんである。

 沙漠化した土地が潤い、人々が戻ってきた。


 目の前にある問題を解決するためには現実に何をすればよいかを地べたに足を着けて考え、その目的を成し遂げるための道程では「些末」なこと(たとえば「政治」)にはかかずりあわない。

 そして、その「何」も「道程」も決して軍事ではない旨を本書で氏は繰り返し述べている。


 氏は西南学院在学中からのクリスチャンで、タイトルも聖書の言葉(マタイによる福音書第一章第23節「神はわれらとともにいます」)。用水路が完成するたびにアフガン人ワーカーたちから「神は偉大なり!」という歓声があがる。もちろん彼らはイスラム教徒。

 本書では、きわめて困難な工事のハードソフト両面にわたるプロセスが詳述されている。

 氏がやり遂げ得たのは、人と人の信頼関係に裏打ちされた具体的行動の積み重ね。

 信仰の力といったようなことは全く強調されてはいないにせよ、それはバックボーンとして「些末」などでは決してないであろう。氏自身が本書タイトルにしているように。