https://mainichi.jp/articles/20220128/k00/00m/050/182000c.amp 選抜高校野球出場校決定(毎日新聞サイト)
「どちらが甲子園で勝てるのかを考慮した」という選考理由。落選した高校に、君たちは甲子園では通用しませんよ、という烙印を押したことになってしまうのではないでしょうか。ヘイトスピーチとまでは言いませんが、憤りを感じました。
という私の気持ちはさておき、選考基準の文面から考察してみました。
公益財団法人日本高等学校野球連盟のホームページに選抜高校野球大会の「大会要項」が掲載されていて、その中に「出場校選考基準」があります。
11.出場校選考基準
(1)大会開催年度高校野球大会参加者資格規定に適合したもの。
(2)日本学生野球憲章の精神に違反しないもの。
(3)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する。
(4)技能についてはその年度の新チーム結成後よりアウトオブシーズンに入るまでの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする。
(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色とする。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。
基準として定められているのは以上5点だけです。
秋の東海大会で準優勝の聖隷クリストファー高校が落選し、準決勝敗退の大垣日大高校が選ばれましたが、秋の地区大会は「参考資料」とたしかに(5)で定められています。
もし聖隷クリストファーが選ばれたら静岡県の2校で東海地区枠2を占めることになりますが、(3)における「地域的な面」は「考慮していない」と選考委員会は説明しました。
そうすると今回の「甲子園で勝てるのか」という理由は、(5)を前提として(4)の解釈から導き出されると見做す以外なさそうです。
しかし、文言上はかなり無理ながら(4)の解釈として成り立つとしても、(2)の「日本学生野球憲章の精神に違反しない」に抵触するのではないでしょうか(選考する側が、ですが)。
この日本学生野球憲章(同じく高校野球連盟ホームページに載っています)では「教育の一環としての学生野球」たる理念が強調されています。「甲子園で勝つこと」を前面に押し出した選考理由は、当該理念に全く馴染まないと思いますし、その理念を踏まえた憲章第2条「学生野球の基本原理」のどこからもそれこそ導き出せません。
第2条(学生野球の基本原理)
学生野球における基本原理は次のとおりとする
①学生野球は、教育の一環であり、平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする。
②学生野球は、友情、連帯そしてフェアプレーの精神を理念とする。
③学生野球は、法令を遵守し、健全な社会規範を尊重する。
④学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない。
⑤学生野球は、一切の暴力を排除し、いかなる形の差別をも認めない。
⑥学生野球は、アンチ・ドーピングの教育、啓発、対策への取り組みを推進する。
⑦学生野球は、部員の健康を維持・増進させる施策を奨励・支援し、スポーツ障害予防への取り組みを推進する。
⑧学生野球は、国、地方自治体または営利団体から独立した組織による管理・運営を理念とする。
すなわち、「出場校選考基準」はもちろん選考される側の基準ですが、選考する側が憲章に背反しているので今回の選考は無効、が私の結論です。違憲の法律は無効であることに鑑みれば、学生野球界における憲章は国における憲法に相当するので、ということです。
なお私は小中高大いずれも東京の学校であり、当落線上だった両校の出身者との知り合いも皆無で、何の由縁もないことを申し添えます。
http://www.jhbf.or.jp/ 日本高校野球連盟ホームページ