隣の席はアラフォーぐらいの女性だったが、中盤過ぎから絶えずハンカチで涙を拭っていた。という空気感、久しぶり。それは、家でDVDや配信を見ていても(たとえ超大画面やら何やらを備えても)絶対に得られない。私が映画を劇場で見るのは2月以来である。
私自身も何度もウルウル(そしてクスッ)。まさにそういう作品だった。主演二宮和也。
実在の写真家、浅田政志。彼の幼少期から40歳になった昨年までが描かれた。
政志は父母と兄との四人家族。政志にとって家族は、家族にとって政志は、かけがえのない存在であり続ける。政志がデタラメな生活を送っていたときもフヌケになったときも、いつでも。
自分の家族がそうだったからこそ。彼がライフワークとして全国各地からの求めに応じて撮る家族写真はどれも「その家族らしさ」が溢れ出ている。2011年東日本大震災の被災者家族も、であった。
主夫の父、浅田家の「大黒柱」母、「なりたい自分になったのは浅田家の中で弟だけ。家族のみんなを巻き込みながら」と呟く兄。平田満、風吹ジュン、妻夫木聡がそれぞれに好演している。
「隣席のハンカチ」が始まったその中盤は政志の木村伊兵衛写真賞が決まって恋人がひとり静かに喜びを噛みしめるシーンだが、演じるのは流石の黒木華だった。
素晴らしい佳作だった。それならば傑作と言うべきでは?と思われるかもしれないが、傑作あるいは秀作とまで賞賛するのは些か躊躇する。だけど、ただ佳作ではなにか言い足りない。素晴らしい佳作、是非そう言いたくなる作品だった。
ラストが浅田家らしい楽しいオチ。まるで政志が撮る家族写真(↓ 2010年発刊)のようだった。
家族にとっての寅さんも↓