さいきん NHKのニュースや「クローズアップ現代」で紹介された本です。
原題『Regretting Motherhood』、オルナ・ドーナト(訳鹿田昌美)、2022年発行(原著は2016年)。著者はイスラエル人女性の社会学者。
「過去に戻れるとしたら、もう一度母になることは選ばない」23人の女性にインタビュー。新自由主義や家父長制などのキーワードを踏まえながら、「社会が女性に背負わせているものの重さ」(訳者あとがきのタイトル)について考察されています。
子どもは愛している、が、自分の人生を生きられていない・・・
「良い母」の考え方や感じ方、行動のルールに反する物語をわずかでも持たない母など、めったに存在しない。そのため多くの女性は、自分の経験に一致する自己表現と、社会的に受け入れられる自己表現のはざまで行き場を失ってしまう(本書254ページ)
普遍的な議論がなされている本書ですが、個別性も見落とすべきではないと思います。それは、インタビュイーが皆イスラエル人であることです。
敵対する国に囲まれているイスラエルは人口の増減がまさに国家存亡に関わると言え、出生率も日米欧等が軒並み2.0を下回るなかで3.0のレベルを維持しています。その意味で、女性に対する社会的圧は相当強いのではないでしょうか(宗教的戒律と相乗して?)。
といったことに関して本書では所々少しずつなるも、もちろん言及はされています。世界10か国以上で出版されているとのことで、イスラエルが「身近」な西洋では当然の与件として読み込まれるかもしれませんが、私たちは意識しておく要がありそうですね。
難易度的には一般書以上学術書未満です。
↓イスラエルも取り上げられています。