丸山正樹氏の新作。特別養護老人ホームの新米介護士が主人公の、7話からなる連作短編集です。今年5月発行。
さすがのストーリーテリングで一気に読ませます。尽くされたであろう取材に基づく洞察は丸山氏ならでは。デフ（ろう者）とコーダ（聞こえない親を持つ子）について深く掘り下げた『デフ・ヴォイス』シリーズがそうであったように。
最終話で主人公が信頼する先輩介護士がきょうだい児（障害がある兄弟姉妹を持つ人）である自身の境遇を語りますが、『デフ・ヴォイス』を思い出させます。境遇がコーダと似ている、と。
そのタイトル『デフ・ヴォイス』には「（ろう者に限らず）言いたいことがあっても圧倒的な多数の前にあってその声が社会に届きにくい社会的少数者の声」という意味を含めたと丸山氏が以前に述べていたことも思い出し、きょうだい児とコーダが似ているにとどまらず より普遍的な問いかけが込められているようにも感じました。
