「ソ連兵に差し出された娘たち」・・・満州に入植していた日本人の娘たちが、戦後に満州を占領したソ連軍の兵士たちからどう扱われたか。ご想像の通りです。
80〜90歳代になった娘たちや他の入植者たち(遺族を含む)の証言を積み上げて事実関係を明らかにしたノンフィクション。
平井美帆著、2022年1月発行(ロシアによるウクライナ侵攻の直前)。開高健ノンフィクション賞を受賞しました。
ソ連兵の暴虐が決して許されないことは揺るぎない前提として、「差し出」した者たちを著者は批判します。
著者の問題意識は、その者たちの行動につながるその時代の女性観であり、それは現在の日本社会も大差ないのではないかと問いかけます。
その者たちは数百人程度の一入植団のリーダー格であり(まさにその時代ゆえ男性に限られる)、公人とまでは言い難く、いずれも故人なので直接の取材はできないにもかかわらず、実名を記していることは議論になるところかもしれません。