平井美帆著 集英社インターナショナル 2015年発行
何人もの中国残留邦人帰国者に取材したノンフィクション。
その人々は満州(中国東北部)に入植していましたが、終戦数日前のソ連軍侵攻を直接の原因として長らく帰国できませんでした。
現在は「中国残留邦人」と総称されていますが、以前はソ連の対日参戦時12歳以下を「中国残留孤児」、圧倒的に女性が多いなか 13歳以上を「中国残留婦人等」と旧厚生省が区分していました。
彼女ら彼らの来し方をもしも強引に一言だけで表すとしたら辛苦という言葉が思い浮かびますが、その二文字でさえあまりにも軽すぎると読みながら痛感します。
それは、「文化大革命」における迫害等中国残留中(家族と別れざるを得なかったあと生き延びえたのは中国人養親の情愛あればこそですが)から日本帰国後にわたってでした。人によっては、まだまだ子ども同然の13歳や14歳が「婦人等」とされた行政対応の差も加わります。
共に日本で暮らすことになった中国人配偶者そして二世にもまた辛苦の日々がありました。
元はと言えば「五族協和」を掲げながら武力によって得た地でのこと。現下のロシアも然り為政者は必ず大義名分を唱えますが他国への侵攻はいつも世の人々を不幸にします。