故立花隆氏は1986年暮れから20日間ほど南米に赴き、16〜18世紀のスペイン人キリスト教聖職者たちによる伝道の跡を取材しました。
本書では1987年発行の雑誌に掲載された短い文章二つと、30数年前に刊行予定だった長めの未発表文章一つを収録。
取材と「(氏が自身の職業と自認する)勉強」に基づき、歴史と宗教(キリスト教とインディオ伝統信仰)に関する考察がなされています。
とりわけ長め文章の方はやや荒さが感じられる未完成だけにかえって氏ならではの思索を素のまま生のまま堪能できました。
カメラマンとして立花氏に同行したあと、刊行予定だった書籍のため単独行で再撮影した佐々木芳郎氏の美しいカラー写真70点が収められています。
当時のインディオ作で「ラテン・アメリカ・バロック美術」とも呼ばれるそれらを まず巻頭口絵で見て「確かにこれは世に出るべき本だ」と思ったほどの素晴らしさでした。
表紙は(立花氏とツーショットの)天使像、裏表紙は三位一体像です。
今年5月30日発行。初出の文章を含む立花氏名義の新刊としては、最後になるかもしれしれませんね。