ミヤシンの映画と読書とスポーツ+馬鹿話

子供の時からミヤシンと呼ばれている男です。本や映画やスポーツやニュース等の感想を短く書きます。2016年1月に始めました(2020年4月にブログタイトルを変更しました)。

聴導犬ー耳が聞こえないユーザーとの良きパートナー

日本聴導犬推進協会の訓練士とユーザーと聴導犬たちの実話です。 犬と暮らした経験がある人なら私を含めて誰でも「人が喜ぶことが犬の喜びにもなる」を実感したことがあると思います。そうした犬の特性を生かした様々な「お役目」の一つが聴導犬です。 なの…

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』

2020年発行の短編集。収録されている5編とも小学生が主人公です。著者の後書きによると、「ああだこうだと悩みながら考え」て「自分だからこそ書ける、少年たちの小説」をつくりあげた、とのこと。表題作における主人公のワケあり同級生の決めセリフ「僕はそ…

冷戦史上最大の二重スパイ

東西両陣営の冷戦真っ只中だった1970〜80年代、オレーク・ゴルジエフスキーはソ連KGBの幹部スパイでありながら英国MI6にKGBの機密を提供し続けた。すなわち二重スパイであったが、1985年に至りKGBは強い疑念を持つ。厳しい監視下に置かれた彼はMI6とモスクワ…

『砂の器』

先週、1974年制作の「砂の器」映画化をCSチャンネルで見ました。1970年代に劇場で観たときには思わなかったことをいくつか・・・ ・丹波哲郎は断固としてセリフを覚えずカンペを使っていたと言われていますが(「丹波哲郎 カンペ」でネット検索すると数々の…

私たちの最初の祖先はどうやって海を越えて来たか?『サピエンス日本上陸 3万年前の大航海』

海部陽介著、講談社、2020年発行。 私たちホモ・サピエンスが初めて日本列島に渡ってきたのは後期旧石器時代。そのルートは表紙の通り3つで、古い順に朝鮮半島→、台湾→、ロシア→であった。 ロシアからは陸続きの地形だったが、朝鮮半島→と台湾→は3万年前に…

『手話の学校と難聴のディレクター―ETV特集「静かで、にぎやかな世界」制作日誌』

2018年にEテレで放送された「静かで、にぎやかな世界」の長嶋愛ディレクターによる「制作日誌」です。 番組名は、その学校内は音声は「静か」だけど子どもたちの手話が「にぎやか」、ということを表しています。取り上げられた明晴学園は手話を「第一言語」…

『地図で読む松本清張』

北川清+徳山加陽著(編集協力 北九州市立松本清張記念館)、2020年12月発行。 清張ファンはもちろん、そうでなくても楽しめます。帯惹句の通り「あの時代」昭和のあれこれがたっぷり盛り込まれてるからです。 発行元の帝国書院と言えば、誰しも中高の社会…

村上春樹の新作『一人称単数』

今年7月発行、8編収録の短編集。ハルキワールドが散りばめられています。タイトル通り、主語はハルキ自身とも思しき「僕」または『ぼく」(書き下ろしの表題作だけ「私」)。 コロナ禍発生後に書かれたであろう表題作には、いま社会を覆っている負の状況…

宮崎学『動物たちのビックリ事件簿』シリーズ

野山で都会で四季折々の動物たち。たくさんのビックリな生態を 写真家の宮崎学が写真と文で表しました。2014年、農山漁村文化協会発行。 ほんの三例だけ中身を少し紹介します。 ・キツツキは、虫を捕食するためと子育て用の巣と目的別に穴を掘る木を選び分け…

野生動物は死んだらどうなるか

文庫本は無関係ですが、本書のサイズを示すために置きました。 『死 Death in Nature 宮崎学写真集』、写真と文は宮崎学、1994年発行。 宮崎学氏は先日のEテレ「日曜美術館」でも紹介されていた写真家です。 亜高山帯(山地帯と高山帯との間)の森。 9月なか…

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』

秋山千佳によるノンフィクション、2019年発行。 「実像」というタイトルはミスリードをもたらしかねないと思う。この点については後のほうで書く。 1934年生れ広島在住の中本忠子さんは保護司を務めていたときから現在に至るまで約40年にわたり非行少年たち…

「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ

「デフ・ヴォイス」シリーズの名脇役何森稔刑事が主人公の短編集。丸山正樹著、東京創元社、2020年発行。 「デフ・ヴォイス」↓ではろう者が直面する社会状況が描かれますが、 本作では肢体不自由者、供述弱者、記憶喪失者が直面する状況がミステリー仕立てで…

小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』(今年度大宅壮一ノンフィクション賞)

2019年発行。河合隼雄文芸賞も受賞した。著者は文化人類学者で、立命館大学大学院教授である。 香港の地で、綱渡り的でもあるいろいろな商いを行うタンザニア人たちに食い込んだノンフィクション。いま「食い込んだ」と書いたが、「いろいろ」の中にはあるで…

馳星周『少年と犬』(今年7月直木賞)

「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」(「老人と犬」より)。 「主人公」はシェパードと和犬のミックス。東日本大震災のあと、単独行で南を目指している。その「目的」は? 大震災の半年後に仙台で「男」と出会ってから足か…

「桃太郎の鬼退治」の後日談

桃太郎に鬼たちがコテンパンにやっつけられてから、鬼ヶ島の「後日談」。 やがて、本土から小舟でやってきた人間の子供たちと鬼の子供たちが友達になり さらに何年もたつと、大人どうしも交流するようになり 年を取った桃太郎も「(鬼退治のときは)ちょっと…

犬好きにオススメ!

馳星周『ソウルメイト』を読み終えました。 タイトルのソウルメイトー「心の友」いや「魂の伴」とでも言うべきかーとは犬と飼い主たる人間のこと。 チワワ、ボルゾイ、柴、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ジャック・…

志村けん著『変なおじさん 完全版』

この本は今年4月に増刷されたので表紙裏の著者略歴に「ー2020」となっています。この3月に新型コロナで亡くなりました。 1998年刊行の『変なおじさん』と2000年刊行の『変なおじさんリタ〜ンズ』を合本して2002年に発行された文庫です。 2,3ページほどの短…

極め付きの「皇室小説」

島田雅彦『スノードロップ』新潮社2020年4月発行 背表紙の惹句が <禁断の「皇室小説」!>。まさしくど真ん中の「皇室小説」である。日本国憲法第一条で定められた方の パートナーの方による一人称なのだから(パラレルワールドにおける、ではあるが)。「…

「ありがとう」も「ごめんなさい」もない森の民族

文化人類学者である奥野克巳氏が、ボルネオの狩猟採集民族プナンを2006年からたびたびフィールドワークして「考えたこと」を綴った。『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』亜紀書房、2018年発行。 読んでいて驚かされ…

後味悪し 『女帝 小池百合子』

頬に生来アザがある二十歳ぐらいの女性が化粧をしていない時にうっかり人と会ってしまい「ぶつけてアザになっちゃった」と咄嗟に言い繕ったというエピソードを聞いたとしたら、どう感じるだろうか。 私なら、彼女は子供の時からどんな思いをしてきたのだろう…

『死刑賛成弁護士』

日本弁護士連合会が会として「死刑反対」を掲げていると言っても、弁護士は何万人もいるのだから当然に「死刑賛成」もいることでしょう。12人の弁護士が「死刑賛成」の立場からの視点を提示します。 視点の一つが、官憲による犯罪者の現場射殺。民主主義国…

事実は小説よりも奇なり!?

生き方がこれほどガラリと変わった人間は稀有と言えるのではないか。まるで小説やドラマのストーリーのようだが、事実起こったことである。 プロテスタントの米国人宣教師が伝道のため、アマゾン奥地の少数民族ピダハンの集落に赴いた。言語学者でもある彼。…

人類に今年もう一つの災厄

今年に入ってから、アフリカ大陸で農作物の壊滅をもたらすバッタの大発生が大きく報じられていました。2月3月になって世界中がコロナ禍に見舞われてから日本の報道ではほとんど見かけなくなっていますが、その後バッタ被害は甚大に至る恐れがあるようです↓ b…

小栁ちひろ『女たちのシベリア抑留』

終戦後ソ連軍によってシベリア抑留を強いられた日本人約60万人の中に数百人の女性がいた。そのうち10人ほどに取材したノンフィクション。2019年12月発行。(彼女らは元看護師たちだが、本書では「看護師」ではなく最近までそうであった当時の呼称「看護婦」…

8月6日は広島原爆投下日

8時15分で止まった時計、中身のご飯が炭化した弁当箱、眼鏡、靴、帽子、ビー玉、、、あのとき広島の「ピカドン」で持ち主を失った14の「もの」たちが呟き、訴え、語りかける。↑鍵はなにを「さがして」いるのか。 岡倉禎志が「もの」たちの「表情」を撮り、ア…

『ベロニカは死ぬことにした』

自殺する時がようやく来た。彼女はベロニカ、24歳。ベッドサイド・テーブルから睡眠薬を四包み取り出した。5分後には、包みは全て空になっていた。 目を開けた時、死んでいなかった。 精神科病院に入院していた。心臓が深刻なダメージを被っていて余命は長…

『悪童日記』著者の自伝

『悪童日記』他の三部作で知られるアゴタ・クリストフの自伝『文盲』。 1935年ハンガリーに生まれ 「わたしは読む。病気のようなものだ。手当たりしだい、目にとまるものは何でも読」んでいた4歳のときから、略歴の そのときどきに彼女がどう思い、何を感じ…

コロナ禍に『世界がもし100人の村だったら』

2001年 マガジンハウス発行。「すべてのエネルギーのうち20人が80%を使い80人が20%を分けあっています」「20人は栄養がじゅうぶんでなく1人は死にそうなほどですでも15人は太り過ぎです」「17人は、きれいで安全な水を飲めません」「14人は文字が読めませ…

『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』

本書冒頭の見開きは ハキリアリに切り取られた葉のイメージ 南北アメリカ大陸の、主に熱帯地域に生息するハキリアリ(葉切り蟻、Leaf cutting ant)。緑の葉を担いで列をなして行進する様子を 映像や画像で見たことがある人も多いと思います。 ハキリアリは…

私小説家の「不健全」な日記

西村賢太『一私小説書きの日乗』は2011年3月7日から2012年5月27日までの日記です。文藝春秋 2013年発行。 この期間の日記や私小説を書くなら100人の作家のうち99人は311東日本大震災に直面しての心の揺れを書き込むでしょう。私自身もそれを読みたいし、実…